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「よおっし、レッツゴー!!」 真紘の白いミニクーパーSが、海に向けて滑らかに発進した。海に向けてっつっても俺は車で海に行ったことなんかないし、全部お任せだけど。 渋滞気味の高速を走りながら、ちょこちょこ話をした。もっぱら真紘のことを。大学の時に人に勧められてやった読者モデルにハマってプロのモデルを目指したこと。 オーディションをいくつも受けて、夢を叶えたこと。この春に新創刊の個性派ファッション誌の専属モデルに起用されたこと。 「え、それってすげえじゃん」 「だから言ったでしょ~?売れっ子になる5秒前だって」 「へえ~……」 本気で感心してたら、ちらっとこっちを見た嬉しそうな微笑みがやっぱすげぇ綺麗で。確かに一般人じゃねえわな。この感じ。 「もー決まった時嬉しくて嬉しくて!!りっちゃんもすっごい喜んでくれて、一緒にカラオケボックスで飲み明かしたんだ~!螢ちゃんがこれからはライバルだって──」 そこまで言った真紘はハッとした顔になって黙り込んだ。 「え、じゃあ有村の彼女もファッション誌の専属モデルなの!?すげえ!」 女性誌と男性誌でもライバルって言うんだ、と思いながら、モデルの彼女をモヤモヤと想像した。すっげぇスタイルいいのかな~とか…… 「や……あの……うん。そうなんだけど。へへへ……」 「何?」 「あの……りっちゃんには内緒ね?余計なこと言うなって怒られる……デコピン……」 真紘はデコピンを想像してるのか、片手で額をすりすり撫でて顔を顰めた。 「はは、分かった。でも先生も自慢だろうな~彼女。見てみたいわ~」 そう言ってから、ふと。そうか、専属モデルくらいになりゃ検索に出んじゃん?って思ってスマホを取り出した。 「専属モデル……ケイ……と」 俺が検索ワードを入力してたら、運転中の真紘が「えっ!!調べてんの!?」って素っ頓狂な声出してさ。 「いいだろ?内緒にするからさ」 「や!やめといた方がいいよ!びっくりするよ!うん!」 「そこまで話しといて調べるなってのが無理。検索、っと」 真紘が変な声で唸ってる横で、俺のスマホの画面には── 「『メンズスタイル』専属モデル・工藤螢……しか出ねえわ……なあ。雑誌名教えてよ」 「……」 「もーいいじゃん!絶対内緒にするって!」 「あああ~……絶対デコピンだぁ……」 言わねえって言ってんのに、真紘のやつズーンって暗い顔になってさ。
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