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FRISK
2時間のドライブの間に、俺は真紘をすっかり気に入ってた。無邪気で型にはまらなくて、楽しくてさ。
基本大人は信用できないって感覚が強い方なんだけど、真紘がそういう俺のキライな大人とはかけ離れたタイプだったってのもあると思う。もう随分前からの知り合いみたいな感覚で笑い合って……
向こうからしてみたら7歳も離れてる俺はやっぱり年下の子ってのがあるのか、時々すげぇ優しい目で俺のことを見て、なんかそれがくすぐったかったけど嫌じゃなくってさ。
途中コンビニに寄って弁当とお茶とコーヒー買って、真紘のお気に入りだって言うビーチ、というよりは浜辺にやって来た。薄曇りの空と海の境い目はあいまいなグレーに馴染んで「海ー!」って感じはなかったけど、
「やっぱいーよねぇ…海……」
砂浜に下りてく手前のコンクリの階段に二人並んで腰かけて、真紘がふうっと息を吐き出しながら言うのに短く同意して膝に顎を乗っけた。
長いリードで犬を散歩させてるおばさんや、遠くの岩場で釣りをしてる人たちを見るとはなしに見て。
友達と街に繰り出してカラオケ行ったりCDショップ回って曲を聞きまくったりすんのも好きだけど、こういう静かでゆっくりした時間もたまにはいいな。
なんて思ってたら、
「うお~~もーたまんない!!」
って叫んだ真紘が靴と靴下を脱いでズボンの裾をぐるぐる膝上まで捲ってさ。
だだだだーーーーと砂を蹴散らしながら走ってって、波打ち際で歓声上げてはしゃいでた。ひとりで。
雪ちゃーーーんって叫んでこっちに手を振って。今度は水しぶき上げながら浜の端まで走ってって。
「ズボン捲ってる意味ねーよ……」
俺は独り言を言ってこみ上げる可笑しさに半笑いになりながら、まるで海が楽しくて仕方ない犬みたいな真紘を眺めてた。
しばらくして、はぁはぁ言いながら真紘がこっちに戻って来たから満足したのかなと思ったら、
「雪ちゃん!おんぶしてったげる~!海、ちょー気持ちいーよ!」
そう言って俺の前に背中向けてしゃがんだ。
「いいって。ヘンだろ!」
「え?何が?いーじゃん!一人でも楽しーけどさぁ、二人だともっと楽しーよ!」
結局真紘の上がったテンションにつられておんぶしてもらって、二人して大笑いして波打ち際を歩いた。笑い過ぎてバランスを崩した真紘と海に突っ込んだっていうオマケつき。
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