イトコ来襲

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イトコ来襲

そういう経緯で俺は今、有村のマンションにいる。登校は有村の車。下校も乗っけてやるよって言われたけど断った。だって仕事を中断して送るとか言うし。不便ではあるけど、松葉杖で歩けるわけだからさ。 知った顔と言えど他人と暮らすなんてって思ってたけど、有村は意外にもめちゃくちゃ気の利く男で、家事一切をやってくれるだけじゃなく文字通り上げ膳据え膳だった。 それでいてガッチリ俺を見張ってるってこともなく適度に放っておいてくれて、ちょうど手が借りたい時にふっと姿を見せるっていう気の利かせっぷり。 すげぇ…真似できねぇ…… 一人暮らしは慣れたものの俺んちはこんなに綺麗じゃないし、料理も切って焼いただけってのが多いし。やってもらうのって楽!この暮らしも満更じゃない、なんて思い始めてた中で迎えた最初の日曜日。 まだ明らかに早朝と呼べる時間にインターホンが鳴った。ちょうど俺がションベンしにトイレに入ってる時でさ。 「お前……連絡もなしにいきなり……」 『いいでしょ~入れてよぉ~りっちゃ~ん』 「言っといただろ。教え子がいるって」 『うんうん。俺、気にしないよ?』 「気にしないのはお前だけ。何。急用?」 『急用急用!ちょー急用!』 はぁ~っていう有村のため息が聞こえて、俺はトイレの水を流して廊下から「センセーいいよ俺、部屋にこもっとく」と声をかけて、有村が用意してくれた部屋に入った。 10階建てマンションの8階、2LDK。物置代わりにしてたとこを片付けて俺の寝るところを作ってくれた。 これ以上ないくらい快適だし、ここは居候として気ぃつかわなきゃなって……そう思ってたのに。 今度はドアホンが鳴って、玄関口でさっきの人と有村が話してるのが聞こえてきた。と思ったら、「おいっ馬鹿っ開けんなっ」って有村の声と一緒にいきなりこの部屋のドアが開いた。 「あ~~ほんとだあ~~~」 ぬっと顔を覗かせたのはサラサラの金茶髪で背の高い、綺麗な男。男に綺麗ってのもヘンかもだけど、でもそれが率直な印象で。 「おはよう!ごめんねえ、突然。てきじょーしさつに来たよ?」 「おはよ……」 敵情視察?と思いながらぼそぼそ挨拶を返すと、後ろの有村がその男の頭をスパンと叩いて「バーカ!とっとと帰れ!」と怒鳴りつけて玄関の方へ押し戻そうとした。
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