ありそうでなかった話

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自慢ではないが、オレは一般的に見て「イケメン」という部類に入るらしく、昔から好意を寄せられることは多かった。ラブレターをもらったことも何度もあるし、学生時代には、同時期に4人から告白されたこともある。 学生時代、クラス替えで同じクラスになってうれしい、と言われることも多かったし、社会人になってからも、同じ職場に緑川さんみたいな人がいるの自慢できます、というようなことを何度も言われた。 けれどそれは、あくまでもオレの「イケメン」という外側への評価である、ということも、オレはきちんと認識していた。もちろん顔も自分の一部分だから、好きになってもらえることはありがたいことだけれども、キャーキャーと外見だけを見て好きになってくれる女子はきっと、たまたまオレが身近なイケメンだったから好きになってくれただけで、他にイケメンがいればオレでなくてもよかったんだろう、とも冷静に思っていた。 そんなオレなので、寄せられる好意には慎重になった。露骨に警戒することはさすがにしないが、それでもやっぱり、身構える。 城崎さんの言葉も、その類なのかと思った。 けれど城崎さんは、こんな風に続けた。
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