消えた月を探してた

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消えた月を探してた

君が消えたー そう聞いた。 思わず耳を疑った僕に、一度も会ったことのなかった彼の親は肩を落とす。 「どこににもいないの」 と母は、 「卑怯者め」 と父は言う。 僕は知っている。 この中には、本当に彼を愛した人などいないのだろう。 母の口元は緩んでいて、父の目の中に悔しい色などない。 世界は陳腐だ。 そんな世界で生きる僕も、腐っているのかもしれない。 そう思った。 ただ一つ真実が存在するのだとしたら、それは彼があの日いたことと、あの月があることくらいなのだろう。 月は、今日も赤い。
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