7人が本棚に入れています
本棚に追加
消えた月を探してた
君が消えたー
そう聞いた。
思わず耳を疑った僕に、一度も会ったことのなかった彼の親は肩を落とす。
「どこににもいないの」
と母は、
「卑怯者め」
と父は言う。
僕は知っている。
この中には、本当に彼を愛した人などいないのだろう。
母の口元は緩んでいて、父の目の中に悔しい色などない。
世界は陳腐だ。
そんな世界で生きる僕も、腐っているのかもしれない。
そう思った。
ただ一つ真実が存在するのだとしたら、それは彼があの日いたことと、あの月があることくらいなのだろう。
月は、今日も赤い。
最初のコメントを投稿しよう!