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その後も2人の予定はすれ違うように埋まり、警視長の移動が決まった後、仕事の合間に少し会う程度のことしかできなかった。
『入ります』
「久しぶりだね…」
『ええ』
いざ、警視長と会うと何を話していいのかわからなくなった。聞きたいことも多くあったが、いざとなると頭の中がこんがらがってしまう。
警視長もまたにっこり笑い、お辞儀をした。
「今までありがとう、これからも是非、県のために尽くして欲しい」
『そんな…警視長こそ、移動してしまうなんて残念です』
そんなに多くの会話は出なかった。やはり警視長も照れくさいのだろうか。僕らよりテレビのアナウンサーが1人で喋っている。
【ご覧ください。こちらが噂の豚汁です。これには何と…高原豚の肉がこんなに…】
僕も警視長も、いつの間にかテレビを眺めていた。しばらく黙っていたが、警視長は小さく言った。
「今度、ゆっくり食べに行くか」
『そうですね』
僕らはそう言うと笑いあった。
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