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第4話【社長令嬢の告白】
5月中旬の月曜日、うららかな陽差しの中、俺、神恵は早めに家を出て、歩いて職場の猫の手に向かっていた。
仕事を始めて1ヶ月が過ぎようとしていた。
仕事にも慣れてきたし、人間関係は良好だ。
4人の従業員はまだ底の知れないところがあるが、皆優しく、ありがたい限りだ。
早歩きで30分、事務所までのこの時間は頭の中を整理するにはいい時間。
朝の事務所にはいつもの顔が揃う。
皆の顔を見ると気持ちが緩む。同窓会に顔を出したみたい。
と言っても、俺は同窓会が苦手。
高校は中退だし、中学時代は陰キャだったから、友人も少なかったからね。
刹那さんの姉、美土里さんはデスク越しにおはようと言った。
「おはようございます。今日のスケジュールはどうなっていましたっけ?」
俺は軽く頭を下げて言った。
「今日はセツナと赤羽さんの所に行ってもらうわ。知ってるでしょ、赤羽工業は?」
俺は一瞬の逡巡、あっと小声がもれた。
自分が女装に使っている声質変音機チョーカーは赤羽工業の製品だ。
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