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第四話 てがみの出会い。
「なぁ、タ」
「うるせぇな、どけよ」
ドン、と俺を押し退け、振り返ることなく悠々と廊下へ出ていくアイツの背中を見送るのも、もう何度目か。
「オイ、また上村のやつ環に絡んでるぞ。脅してんのか……?」
「かも。いつも環嫌がってるし、上村……話したことあるヤツほぼいねぇから、気味悪いぜ」
それを見ていたクラスメートたちがヒソヒソし始める。
誤解を解こうと顔を向けるとあからさまに目を逸らされ、なにも言えない。
アイツは俺以外には優しく、口数は多くないがよく笑うので愛嬌もあり、女子だけではなくあっという間にクラスに受け入れられた。
対する俺は自ら積極的に関わらなかった自業自得と人相も相まって、あまり受け入れられていない。どうしてもそういう目で見られてしまう。
俺はそれでも、アイツに何度も声をかけて懸命に仲良くなろうとした。
あの日のことを謝りたかった。
俺の軽率な行動で嫌な思いをさせたことと、話そうとしていたアイツをずっと避けていたこと、他にもたくさん。
しかしアイツは俺を避けていて、話しかけると冷たく睨みどこかへ行ってしまう。
あの時とは立場が逆だ。
アイツはこんな気持ちだったのか。
せっかくまた再会して隣にいるのに、俺の胸のぶっとい棒は熱を増し、傷口をジリジリ焼いてしかたない。
ぼうとしているとクラスメートたちの視線が嫌で、大人しく自分の席に座る。
今日は俺と話すのが嫌ならと、手紙を渡したくて声をかけた。震えながらしたためた、初めての手紙だ。
差し当たって書き出しは〝From.奇跡信者〟とした。
名前を書いたら読まないかもしれないと思ったのが、最初の理由。
二つ目は、キザな理由。
示し合わせたわけでもないのにここへ転校してきて、俺は珍しく遅刻をして、そこでまさかアイツとぶつかるなんて奇跡じゃないか? と思ったからだ。
それから次には〝どうか、ほんの少しだけ聞いてほしい〟と続く。
〝お前にたくさん謝りたかった。〟
〝隣だからと俺に付き合わせて悪かった。
ずっと避けて悪かった。
隣に居座って悪かった。
好きだと言って悪かった。〟
〝ごめんなさい〟
〝けれど押し退けられても、ほんの少し触れれたことが嬉しい。〟
〝お前の声を聞けると嬉しい。
背が大きくなったな。
もっとかっこよくなった。〟
〝隣の席、嬉しい。〟
〝寮のな、隣も俺なんだ。
よかったら遊びに来てほしい。
きっと綺麗にしておくから。
お前の好きなお菓子も用意しておく。〟
〝気が向いてくれると嬉しい。
すごく嬉しい。〟
〝お前は嫌だろうけど、俺はやっぱりまた会えて嬉しいんだ。〟
〝俺はお前のことが 。〟
〝また、お前の友達になりたい。〟
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