第四話 てがみの出会い。

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「──上村っ、環の机になにしてんだ?」 「っ」  渡せなかった手紙をせめて机の中にしのばせようとしていると、アイツを心配していたクラスメートたちが俺の腕を掴んだ。  驚いてポカンとする間に、手の中の封筒は一人に奪われてしまう。  俺は焦って「返せよ」と不機嫌な声を出した。クラスメートたちが一歩怯む。 「こ、コレで環に命令するのか? それとも脅しのネタ?」 「は?」 「お前はいつも嫌がる環に無理に絡んでるじゃねぇかっ」 「そうだっ。いじめるのはやめろっ」 「な……、っ」  俺はまったく意味がわからなかった。  脅すなんてしてない。いじめてもない。だけど集団心理と想像や思い込みで至った結論に、胸を張って言い返せず黙ってしまう。  だって確かに、アイツにとって嫌がっているのに何度も声をかけてくる俺は、イジメっ子だろうからだ。  クラスメートからしても元々幼馴染みだと知らず、俺はずっと一人でいたので、突然転校生に固執するのは変だと訝しむのは当然だろう。  苦々しく黙り込んだ俺に、クラスメートたちはそれ見たことかと怒りを増した。 「もうこういうことはやめてやってくれっ」 「!」  ビリッと真っ二つになった俺の手紙。  それはさらに細かく千切られて、ツカツカと近くのゴミ箱に捨てられる。 「教師に告げ口はしない。お前が環をかまわなければそれでいいんだ」 「このことはここでの秘密にする。だからもう、環の嫌がることはしないでくれ」  勘違いとは言えアイツを守らんとしたクラスメートたちは、そそくさと元いた場所に帰っていった。 「…………」  静まり返った教室。  俺はすねた顔をして、教室を出ていく。  馬鹿、勘違いなのに。俺はアイツと友達になりたいだけなのに。  前を向いて、睨むような顔で歩いていく。ズカズカと大股の俺を、廊下の生徒たちはギョッとしてかかわらないように逃げていく。  廊下をひたすら歩いていると、階段を上がってきたアイツと出会う。  だが俺はなにも言わないで、ズカズカと階段を降りていく。 「っ……ポチ……?」  びっくりしたような、焦ったような、つい出てしまったような、小さな声。  そんな声でアイツが俺を呼んだような、都合のいい幻聴を聞いた。
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