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そんなこと言ったってアナタ嫌なこと言ってくるじゃない。私だってアナタに嫌なこと言うし、一緒にいたって楽しくなんかないでしょう?
「そんなつもりじゃ…」
「ああ、思いきり出口の前じゃねえかよ。勝手にアンタだけ返したら俺が透子さんに無責任な男だと思われるだろうが。」
橘さんが私を引き留めたのは姉のため。ここまで私の存在を軽く扱われてありがとうなんて言えないよ。まるで私は姉の付属品みたいだ。
「あなた足早いのね……?」
「ああ?学生の時陸上部だったしな。それなりに自信はあるぜ?」
そう。じゃあ橘さんを置いて走って逃げるのは無理そうね。
その格好と靴で追いついてきたんだもの。私に勝ち目なんてない。
「私、ちょっとお手洗いに……」
「出口で待つぞ?」
そっと離れていこうとする私についてくる橘さん。女子トイレの出口で待つってそれはいくらなんでもないでしょう?
「アンタが必ず俺のトコに戻ってきますって約束しねえなら本当にやるからな?」
なんてひどい脅しなんだろう。橘さんなら本当にやりそうで怖い。
私も橘さんもお互い一緒になんていたくないはずなのに、無理して一緒にいようとする。
「橘さんは帰りたくないの?」
恐る恐る聞いてみる。橘さんは背が高いから一々見上げなくては行けなくて本当に嫌になる。絶対帰るころには首が痛くなってると思う。
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