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どう考えても黙って離れた私が悪いから、ちゃんと謝った。謝れば橘さんも許してくれるって思ってた。だけど……
「いくら相手が嫌だからってあの二人が気を使わなくていい程度に仲良さそうに振る舞うってことがアンタには出来ねえの?我慢してんのはアンタだけじゃねえんだぞ?」
どうしてこの人は私を平気で傷付けるんだろう?
出来ないよ。私あなたみたいに大人になれてないもの。
仲良くなんて出来ないよ。だって私はあなたが大嫌いだもの。
今ここで私を連れだしてくれる人がいたらいいのに。私は橘さんから逃げ出したくてたまらなかった。
何も答えない私に、橘さんはイラついたように頭をかく。
私は俯いてるから背の高い橘さんから顔は見られることは無いだろう。
ジッと涙をこらえて立ってることしか出来なかった。周りから見たら私たちは痴話げんかをしているカップルにでも見えているかもしれない。
「トイレでも一言俺に言っていけばこんなに探さなくてもいいだろ?心配して走り回った俺の身にもなれよ。」
心配?橘さんが?そんな感情無さそうなのに。
恐る恐る顔を上げると橘さんはもう怒った顔はしていなかった。
怖かった気持ちと、責められたことで張り詰めていた感情が私の心から溢れ出す。
いきなり涙腺が決壊したかのようにボロボロと涙が零れてしまう。
「まーた泣く。なんでお前は俺を公衆の面前で酷い男にしたがるかなあ?」
酷い男は間違ってないじゃない。
でも触れる手のひらは暖かい。
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