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「……こ、……祥子。」
ふわふわの夢の世界の中を漂っていると、どこからか私を呼ぶ声がする。もう少し眠っていたかったのに……そう思いながらも、ゆっくりと覚醒していく意識と開いていく瞳。
「……ん?呼んだ、お母さん。どうしたの?」
目覚めた私の顔を覗いていたのは母だった。さっきまで私の面倒は全部橘さんに見させていたのに、母が来たという事は橘さんはもう帰ったのかしら?
眠っている間に帰るなんて、起こしてくれれば良かったのに……なんて思ってしまって頭を振る。橘さんは病人をわざわざ起こしてから帰るようなことはしないだろうから。
「ええとね、太輔君がお見舞いに来てくれてるの。祥子が寝てるって伝えたから今リビングにいるんだけど。」
「太輔君が!?どうして私が風邪だと知っているのかしら?……じゃあ橘さんは、どうしているの?」
太輔君が私に好意を持っている事は父や母は知らない。子供の頃から仲良しの彼がお見舞いに来ただけとしか思っていないだろう。
けれど太輔君と橘さんは本当に不思議だけれどライバル関係になる。喧嘩をする様な二人ではないだろうけれど何をしているのかは心配になる。
「橘さんは少し前にお父さんがスーパー銭湯に誘って連れて行っちゃったわ。太輔君は瑞樹君からラインを貰ったって言ってたけど……何か祥子に話したいことがあるそうよ?」
それは、良かったと言っていいのかしら?とりあえずお父さんありがとう!たまにはいい事をしてくれるのね。でも……次は回るお寿司で勘弁してもらおう。
あの時の告白から顔を見せなかった太輔君が話したい事って何だろう?でもちょうどいいタイミングだったのかもしれない。私も彼に話さなくてはならない大切なことがあったから。
「わかったわ、顔を洗ってくるから、10分後に私の部屋に来てって伝えて貰っていいかしら?」
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