風邪ひき発熱、辛くて最悪

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「分かったわ。お父さんにはもう少し橘さんとゆっくりしてきてもらうように伝えとくわね。」 そう言ってウインクをする母。……気持ちは有難いのだけど素直に受け取れなくなるのでやめてください。 パタパタと階段を下りていく母の足音を聞きながら、急いでパジャマから私服に着替える。私も階段を下りて洗面所でしっかりと顔を洗ってスッキリした。横の棚にあるマスクを箱から一つ取り出して付ける。 部屋に戻ると太輔君が本棚の前で真剣に小説本を眺めてる。話をしに来たはずなのにこういう所は本当にマイペースな彼らしい。 「お見舞いに来てくれたの?ありがとう、太輔君。」 私が戻ってきて事に気付いていなかった様で太輔君の肩がビクッと揺れる。ああ、太輔君でも驚くことがあるのね? 「もう、驚かせないでよ、祥子ちゃん。熱は?もう起きていても大丈夫なの?」 手に持っていた小説本を棚に戻して、太輔君は私の傍に寄ってくる。子供にでもするかのように自然に右手で私の額に触れて熱を測る。 太輔君は大人しくマイペースな性格なのにパーソナリティスペースが狭い。気が付かないうちにビックリするほど近くに違和感ない存在としているのよ。 昔から彼はそうだったので私はもう慣れてしまったけれど、仲良くなったばかりの人はびっくりする事も多いんじゃないかしら? 「うん、熱は無いね。でも念のためベッドには入っておいてね、僕の所為でぶり返したら色んな人に僕が怒られてしまうからね?」 そう言ってグイグイと私の背中を押してベッドの中へ戻される。もう、私は大切な話があるのに、いつの間にかいつも太輔君のペースにされちゃうんだから! 「……今日は、あの時にあった男性も祥子ちゃんのお見舞いに来たんだね?」
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