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「橘さん……まだ千切りの最中なんで腰に腕を回して後ろから抱きしめるのは止めてください……」
今日は土曜日。橘さんが車で迎えに来て、いつものようにキッチンで二人で昼食を作っているはずなのに。最近橘さんがどんどん役に立たなくなってきている。最初はまだ少し手伝ってくれるのだが、途中からは私の身体にばかりくっついてくる。こんな大きなくっつき虫はいりません。
「これくらいしかアンタに触れさせてもらえないんだし、充電させろよ。」
そう言っていつも、いつもそうじゃない!この時間が嫌な訳じゃない。だけど私だって普通の女の子なんだって気付いて欲しいんです!
気付いて貰えない悔しさで黙ってると橘さんの手が私の服に中に侵入しようとしてきた。私はその手を叩き落して橘さんから距離を取った。
「私、こんなお付き合いしたかったんじゃないです。こんなお付き合いが良いなら次からは家政婦さんでも雇って下さい!」
いままでの我慢と不満が次々と溢れてきて、橘さんを責め始める。感情が高ぶり過ぎて目からまで何かが溢れ出してくる。
「お、おい?何でいきなり泣き出すんだよ?俺が触れることがそんなに不満なのか?」
「ちが、うに決まってるじゃないですか!私はただ初めてらしい男女のお付き合いがしたいんです!平和そのものの老年夫婦ごっごがしたいんじゃないんです。」
老年は言い過ぎたかもしれない。橘さんは自分だけはベタベタとくっついているからラブラブのつもりなのかもしれないし?
「初めての付き合いって……ああ、アンタはそうなのか。ちゃんと気付かなかった俺が悪かった。アンタの好きそうなところで、デートしようか?」
「違うんです。私、橘さんにもっと大人扱いして欲しいの……いつも橘さんがするようなデートに連れて行って欲しいんです。」
私は精一杯背伸びをして橘さんにお願いした。私だって橘さんに似合う大人の女になりたい。そしてその世界を感じてみたいのよ。
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