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私は橘さんに痛い事も苦しい事も要求した覚えはないのだけれど?だって私はそんな瑞樹君みたいな趣味は欠片も持って無いですし?
でも意味が分からず首を傾げる私を、橘さんは苦虫を噛むような顔で見ている。そんな顔されたって意味が分かりませんってば。
「……アンタ、俺が言いださなきゃいつまでもお預け状態でいるつもりだったな?」
お預け状態って……橘さんが私が良いって言うまで待つって言ったんじゃないですか。……確か言われなければいつまでも待たせてしまうかもしれないけれど、急に期限を付けられた気がして焦る。
付き合って数週間、好き合ってる二人が一緒に夜を過ごしてもおかしくはないと思う。きっと橘さんは大切にしてくれるって分かってる。でも、まだ私には勇気が出ない。
「少しずつ進むっていうのは……ダメなんですか?」
「今までに出来ることはそうして進めて来てる。ただこれ以上の所で止めるのは俺の理性的に無理。俺はそれくらい早くアンタの事が欲しいわけ。」
理性的に……?それってどういう事なんでしょう?私は男性ではないしそういう生理的な事情があまり分かっている訳じゃない。分かったことはこれ以上進めば橘さんはストップが効かなくなるって言っているという事だ。
「じゃあ、後は私の覚悟待ちなんですね。……あの、優しくしてくれるんですよね?」
「今、上目遣いでそう言う事を言うな。覚悟を決めてから言え。」
何気なく言った一言で、橘さんから睨まれてしまう。どうしてですか?怖いから確認くらいしたっていいじゃないですか?
睨まれて私は拗ねて橘さんから顔を背けた。私はつき合い始めて随分我が儘になった。彼に優しくされないとすぐに拗ねてしまう。
可愛く甘えることは苦手なくせにこういう所ばかりが増えていく。こんな自分をいつか橘さんは嫌ってしまわないだろうか?
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