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「だから……そんなセリフをそんな顔で言うから俺の理性が壊れかけるんだろうが!アンタが何も考えずに言っている一言一言で俺がどれだけ悩んでるかアンタは知らなすぎるんだよ。」
「そう……なんですか?」
振り向くといつもの癖で頭をガリガリと掻いている橘さん。止めてください、禿げたらお付き合い考えますからね?……嘘だけど。
確かに私は橘さんと会話するときはあまり深く考えていない。だからどの言葉に橘さんが引っかかっているのかがあまり分かっていなかった。さっきのセリフは確かに今言う事ではなかったかもしれない。
「髪が可哀想。育毛剤、次来る時に買ってきましょうか?」
「俺はまだそっちは困ってねえよ!アンタが俺にこうさせてんだろうが?」
ああ、必要なのは育毛剤ではなくカルシウムの方だったかしら?付き合う前から思っていたのだけれど、どうしてこの人の素の顔はこんなに短気なんだろう?
普段がこんなに短気なのなら『社会人の顔』の時に不満を感じた場合はどうやって処理しているのだろうか。営業職なのだからそれなりにストレスがあるはずなのに、彼から仕事の愚痴を聞いたことは無い。
「橘さんは牛乳をもっと飲んだ方が良いですよ?きっとカルシウムが足りてないんです。」
「アンタ、俺のこの高身長が見えないのか?学生時代から毎日それなりの量を飲んでるよ。」
あ、そうですか?じゃあ何でそんなに怒りっぽいのでしょうね?怒らせているのは自分のおとぼけ発言だと分かっているけれど。何とか話の内容を大人の内容から変える事が出来てホッとする。
大事なデートの話も出来なくなってしまったのは困ったけれど。橘さんが何かを考えてくれているようだし、待っていれば誘ってくれるかもしれない。
狡いかもしれないけれど、まだ二人が進むことについては答えが出せないの。もう少しだけ時間を頂戴?
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