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「二人で楽しめるデートだけで別にいい。……アンタが望まなければ待つって言いだしたのは俺だし、それくらい最初から覚悟してる。」
そう言いながらも溜息はつくんですね、橘さん。そういう所が素直過ぎてちょっと笑えちゃうけれど今は我慢。
「私、覚悟が出来たらすぐに橘さんの所に来ます。緊張しながらの大人のデートじゃ楽しめない、橘さんとの大人のデートはその後でゆっくりしたいんです。それじゃ、駄目ですか?」
少しの時間考えて私が出した答え。私がしたかったデートも彼はちゃんとしてくれるって言ってるのだけれど、緊張ばかりじゃ楽しめないもの。
それに橘さんが考えてくれるデート内容にだってとても興味がある。
「は?いきなり来るのか?……アンタがそう思うなら、デートはそれでもいいけど。」
驚いた顔の橘さん。休日はいつも二人でいるのだから、別に困らないですよね?用事がある日はちゃんと二人で連絡し合ってるんですもの。
「ええ、外泊用の荷物を持っていきなり来ます。……そしたらその日は泊めてください。心配しなくてもちゃんと休日に来ますから。それで、いいですよね?」
最期のお皿を橘さんから手渡されて、私は綺麗に拭いて棚の中に片付けた。言いたいことはちゃんと伝わったかしら?
言えば不思議と心の中で気持ちの準備が出来てくる気がする。今までずっと逃げようとしていたから、彼との関係が進められなかったのかもしれない。
「アンタだけ心の準備してくんのかよ。」
あれ?喜んでもらえると思ったら、ちょっと不満そうな顔の橘さん。橘さんにも心の準備が必要なんですか?
「ダメ……ですか?」
甘えるように、橘さんの手に触れる。まだ手を拭いていないから水で濡れていて冷たい。
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