番外編①お付き合いのい・ろ・は

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狡い事をしている自覚はある。こうすれば橘さんは私の言う事を聞いてくれるって、いくら鈍感な私だって理解してやっている。 それでも私だって全部橘さんに決められっぱなしじゃ悔しいもの。これってやっぱり私たちの性格がそうさせているのかしら? 「あーもう、アンタの好きにしろよ……その代わり」 『ベッドの上じゃ俺の好きにさせてもらうからな?』と、小さな声で囁かれて顔が真っ赤になってしまう。もう!本当に言わなくていいことまで言ってくるんだから! 私が怒って手を上げようとすると、橘さんはタオルで手を拭いてさっさとキッチンを出てしまう。アナタを振り回してるつもりが結局振り回されてる。恋愛って難しいわ。 「来週は出来るだけ動き回れる格好で来いよ?」 「はい?珍しいですね、橘さんがそういう事言うの。いつもはお洒落手抜きするなって言うくせに。」 私の容姿を好みじゃないと言っていた橘さんだが、私がお洒落を手抜きするのはあまり好まない。顔はすっぴんでも変わらないとかいうくせにね? 「手抜きしろって言ってるんじゃねえよ。俺はアンタの可愛い恰好結構好きだし……ただ今度はそれなりに動く予定だから。」 「はい?」 今、橘さんはなんて言った?私の可愛い恰好が何ですって?おかしいわ、私は何度も橘さんがスタイルの良い大人の女性が好みだと聞いたことがあるのよ。きっと聞き間違いだわ。 「聞こえてるだろうが、何度も言わせんな!」 橘さんに聞き返すと、彼は恥ずかしがってか怒鳴ってそっぽを向いてしまった。スケベな事は平気で言うくせにこういう事だけなかなか言えない人だから…… でも嬉しい。橘さんが可愛いと思ってくれていたなんて。
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