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私が助手席に座ると、橘さんはドアを閉めてトランクの方に移動した。トランクを開けてサンシェードを取り出し運転席に乗り込む橘さん。
フロントガラスにサンシェードを付けて前からは見えないようにしてくれた。
「これで我慢しろ。アンタだって事故りたくはねえだろうが。」
そう思うのなら電車で来れば良かったじゃない。と言いそうになる口を慌てて閉じる。
我慢するのよ、祥子。相手は体調の悪い人なんだから。
そう考えてるうちに橘さんは遠慮なく私の太ももに頭を乗せてくる。ちょっとは心の準備をする時間をください!
橘さん私の膝枕で目を瞑り大きく息をしてる。身体の力を抜いたのか橘さんの頭部が重さを増した気がした。
「撫でろよ。」
はい?いきなりの橘さんからの命令に目が点になる。何を言ってるの、この人は?
「あの……意味がよく分からないんですが?」
「前に膝枕した時みたいに撫でたり髪を触ったりしろって言ってんの。」
ぎゃ!!気付いてたんだ、あの時の事。しっかり寝てると思ってたのに!
「さあ、ちょっと記憶にないんですけど……」
寝てると思ってた相手にするのと、明らかに起きていると分かっている橘さんにするのでは恥ずかしさが違う。たとえ誰も見ていなくても、だ。
大体橘さんもそんな図体と性格をしていながら、私に撫でろなんてよく言えると思う。
逆の立場だったら言えない、絶対に。
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