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階段を駆け上がり橘さんの部屋のインターフォンを押す。……返事がない、部屋でとうとう倒れたんじゃないでしょうね?
三度インターフォンを押した後、ドアノブを下げてみると簡単にドアが開いた。インターフォンに出ないのに無施錠?
「こんにちはー、橘さん生きてますかー?」
ドアを少しだけ開けて顔を部屋の中に入れて声を掛ける。ぱっと見、玄関から見える位置には倒れてはなさそうだ。
声を掛けてみても、返事がなくて困ってしまう。一度入っただけの橘さんに部屋に家主の許可なく入る事は私にはちょっと出来ない。
ベッドで眠っているのと床で倒れているのでは状況が違いすぎる。このままほっといて帰る事も出来ず不審者になってしまうのも納得できない。
バックからスマホを取り出し橘さんの番号を押す。これが奥から鳴れば彼は部屋の中にはいるという事だ。何コールか鳴らすと奥の部屋からメロディが聞こえてくる。……やっぱりいるんだ!
「っ、橘さん!勝手に上がりますよっ!」
大きめの声で声を掛けて、ドアを開けて体を中に滑り込ませる。靴を脱いで中に入るけどリビングにはいない。奥の寝室を開けると上半身をベッドに預けて橘さんが辛そうな顔で眠ってた。
お弁当よりもこっちを優先して来るべきだったんだわ……
車の用具を避けて橘さんの傍に行ったけれど座る場所がなくて、ベッドの上…橘さんが頭を置いている隣に座った。
休日だからか整髪料を付けてない、いつもよりなお柔らかい髪にそっと触れる。
……私がもっと早く来てればこんな顔させて眠らせなくて良かったのかもしれない。
橘さんが私に求めているのは母親や彼女の代わりではなく枕なのに___
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