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「私も馬鹿よね。お姉ちゃんの事は言えないわ。」
一人、ポツリと呟く。お弁当を作ってビックリさせようなんて……その前に私がしなきゃいけないことがあったのに。
「……おせえよ、チビガキ。」
(絵師様 みみみ様に頂きました。ありがとうございます。)
私の独り言で起きたのか、橘さんが細く目を開いた。でもその声は怒ってなくて掠れているけれど安心したような声音だった。
「わ、私…ごめんなさい。ごめんなさい、橘さん。」
申し訳なくて謝ることしか出来なかった。そんな私の脚に何の許可も得ず橘さんは頭を乗せた。無理な体勢を取る橘さんは、きっと私が謝るのを止めさせようとしてるのだろう。
「せめてベッドで寝てください……橘さん、お願い。」
そう言うと橘さんは本当に嫌そうにだけど起きてベッドに寝直してくれた。私の脚の上でさっきよりずっと楽そうな表情をする橘さんにホッとする。
橘さんの柔らかな髪を梳いて、額に触れるとやっぱり少し熱い。いつもこうなのかしら?
何度も撫でているとやっぱり何だかムズムズしてくる。何だか心がくすぐったいのだ。
これはもしかして……子供に対して抱くような母性本能を感じているって事なのかもしれないわ。そっか、母親ってこんな気持ちなのね?
自分の中に生まれた感情に一人で納得して、寝息を立てている橘さんを確認して小説本を広げる。
さあ、今日はどんな推理が待っているのかしら?
時間はたっぷりあるんだからとゆっくりと読み進めていった。途中何度か太ももに触れる手を叩き落し「どこまでもスケベな人なんだわ。」と呆れながら。
全く、せっかく感じている初めての母性本能とやらを台無しにしないで欲しいわ。
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