予想外の展開で本当に最悪

8/16
前へ
/297ページ
次へ
私が用意したお弁当を無言でガツガツと食べ進める橘さん。外で食べている時と全然違う、これが彼の素なんだ。何というかこう……男子学生のような食べっぷりに呆気に取られてしまう。 美味しいとも、不味いとも言わずに食べるその姿を見ながら私は考えていた。 「これも……どうぞ?」 私の分から玉子焼きとから揚げを借りた皿にのせて差し出す。 「サンキュ、貰う。」 遠慮なく私の皿から取って口に放り込む橘さん。その姿が何かに似ている。 「……そうよ、あれだわ!雛鳥が親鳥から餌を一生懸命貰う姿、その瞬間まさにそのもの!」 自分が感じる感情の風景を思い浮かべて私は再度納得する。間違いなく母性本能だと! 「誰が雛鳥で、誰が親鳥だって……?アンタこそ第二次成長期をもう一回やって来いよ?」 「なんですって!?」 雛鳥扱いが嫌だったのか、橘さんは食べるのを止めて低い声を出す。それならちゃんと来ました!身長だってチビだけどそれなりに伸びたし、きちんと生理も来た。……胸辺りが殆ど成長しなかっただけで。 「アンタが先に喧嘩売ってきたんだろうが?」 「私は感じたままを素直に話しただけです!」 いつものように始まった睨み合い。さっきまで感じていた母性本能とやらは何処かに飛んでいき、完全に臨戦態勢へと入る。 お弁当を挟んでお互いの意見をギャアギャアと言い合って…… 2人が落ち着いてお弁当を食べ終わるころには5時を過ぎていた。ああ、馬鹿馬鹿しい。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2552人が本棚に入れています
本棚に追加