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私が用意したお弁当を無言でガツガツと食べ進める橘さん。外で食べている時と全然違う、これが彼の素なんだ。何というかこう……男子学生のような食べっぷりに呆気に取られてしまう。
美味しいとも、不味いとも言わずに食べるその姿を見ながら私は考えていた。
「これも……どうぞ?」
私の分から玉子焼きとから揚げを借りた皿にのせて差し出す。
「サンキュ、貰う。」
遠慮なく私の皿から取って口に放り込む橘さん。その姿が何かに似ている。
「……そうよ、あれだわ!雛鳥が親鳥から餌を一生懸命貰う姿、その瞬間まさにそのもの!」
自分が感じる感情の風景を思い浮かべて私は再度納得する。間違いなく母性本能だと!
「誰が雛鳥で、誰が親鳥だって……?アンタこそ第二次成長期をもう一回やって来いよ?」
「なんですって!?」
雛鳥扱いが嫌だったのか、橘さんは食べるのを止めて低い声を出す。それならちゃんと来ました!身長だってチビだけどそれなりに伸びたし、きちんと生理も来た。……胸辺りが殆ど成長しなかっただけで。
「アンタが先に喧嘩売ってきたんだろうが?」
「私は感じたままを素直に話しただけです!」
いつものように始まった睨み合い。さっきまで感じていた母性本能とやらは何処かに飛んでいき、完全に臨戦態勢へと入る。
お弁当を挟んでお互いの意見をギャアギャアと言い合って……
2人が落ち着いてお弁当を食べ終わるころには5時を過ぎていた。ああ、馬鹿馬鹿しい。
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