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そんなに苦しそうな顔をするのならば、女の人なんか呼ばないで最初から私に頼めばよかったじゃない。
橘さんの顔を覗いてから理解出来た。本当は橘さんが眠りたいだけで、女性を好きで抱いてきたんじゃないって……それほどまでに彼の眼の下の隈は酷かった。
瑞樹君からそんな話は聞いたことが無いからいつもコンシーラーか何かで隠しているのだろう。
「私は……枕、止めるなんて言ってないです。」
「アンタ、馬鹿じゃねえの?こんな嫌な思いまでさせられてかよ。」
普段あれだけ自信家の橘さんが……きっと彼は彼自身を許せないんだろうと思った。眠るためだけに女の人を抱こうとしたことも、そして私をその女性と間違えて襲ってしまったことも。
「橘さんが最低な事と、私が人助けをしたい気持ちは関係ない事ですから。」
「そんなアンタだから、こんな俺は知られたくなかったんだ。」
橘さんは腕で自分の顔を隠す。どうして私には弱みを見せちゃ駄目なの?橘さんのカッコ悪い所なんて何個も知ってるよ?
本当は私も知りたくなかったかもしれない。どうしてか分からないけれど。だけどこんな風になるくらいなら、今度からは私が必ず助けてあげたい。
「私は枕役、止めてあげませんよ?どんな形であってもこんなに必要とされたのは初めてなんです。今日の事は怒ってますけど……私じゃないと駄目なんて言われたのは生まれて初めてかもしれない。嬉しかったんです。」
そう言ってニコリと微笑んで見せる。驚いて腕を退かして私に顔を見せる橘さんが可愛くて、柔らかな髪をそっと撫でてあげた。
どうしてか橘さんは私を見たり、目を逸らしたり……また私を見つめてみたり。目が見え難いの?目薬持ってきましょうか?
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