出会いからして、もう最悪

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出会いからして、もう最悪

「パンツ見えてますよ?」 その男が私に言った最初の言葉はそれだった――― とにかくその日は朝から最悪だった。 スマホの電池が切れてアラームが鳴らずに会社に遅刻してしまうし、会社ではミスをして部長に怒られてしまうし……そして一番最悪なのはさっきかかって来た姉からの電話だった。 『祥子、アタシ瑞樹とお付き合いすることになったから―――』 なんでよ!つい最近まで瑞樹君の事は幼馴染って言い張ってたじゃない! 他の男とのデート報告してきたじゃない! 私の方がずっと前から瑞樹君の事好きだって言ってたじゃない? どうして?どうして?どうして? いきなりの報告に信じられなくて、ショック過ぎて涙も出なくて。 気付いたら家を飛び出して、電車に乗って知らないところまで来ちゃってた。 ふと近くにあった自販機で飲み物を買うと、後から男の人が来て買おうとした時に小銭を何枚か落としたんだ。 もう暗かったし、私の近くにも転がってたからしゃがんで拾うのを手伝ったの。 「はい、どうぞ?」 そう言って渡そうとすると、男の人は驚いたように私の顔を確認した。 不思議に思って首を傾げると、その人は軽く首を振って初対面の私に言ったのだ。 「パンツ見えてますよ?」と。
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