2536人が本棚に入れています
本棚に追加
/297ページ
出会いからして、もう最悪
「パンツ見えてますよ?」
その男が私に言った最初の言葉はそれだった―――
とにかくその日は朝から最悪だった。
スマホの電池が切れてアラームが鳴らずに会社に遅刻してしまうし、会社ではミスをして部長に怒られてしまうし……そして一番最悪なのはさっきかかって来た姉からの電話だった。
『祥子、アタシ瑞樹とお付き合いすることになったから―――』
なんでよ!つい最近まで瑞樹君の事は幼馴染って言い張ってたじゃない!
他の男とのデート報告してきたじゃない!
私の方がずっと前から瑞樹君の事好きだって言ってたじゃない?
どうして?どうして?どうして?
いきなりの報告に信じられなくて、ショック過ぎて涙も出なくて。
気付いたら家を飛び出して、電車に乗って知らないところまで来ちゃってた。
ふと近くにあった自販機で飲み物を買うと、後から男の人が来て買おうとした時に小銭を何枚か落としたんだ。
もう暗かったし、私の近くにも転がってたからしゃがんで拾うのを手伝ったの。
「はい、どうぞ?」
そう言って渡そうとすると、男の人は驚いたように私の顔を確認した。
不思議に思って首を傾げると、その人は軽く首を振って初対面の私に言ったのだ。
「パンツ見えてますよ?」と。
最初のコメントを投稿しよう!