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私の初恋
あれは、中学一年生の時だった。幼馴染で部活も同じで、仲の良かった同級生の天使(あまつか)瞬君に誘われて、二人で手を繋いで見に行ったんだ。
私は、保育所の頃からモテモテだったが、男の子とデートするのも初めてで、ましてや大花火大会を見に行くのも初めての経験。スマホで電話番号とメルアドの交換をしたのも、瞬君が初めての男の子なのだ。
二人でお小遣いを出し合って買ったB級グルメの富士宮焼きそば、大分のから揚げはとっても美味しかった。特に、「けずりいちご」は最高だった。その名の通り原材料がいちごそのまんまで二人でケラケラ笑ってしまった。
凍ったいちごを削り出したカキ氷の新食感を味わいつつ、瞬君が用意してくれたゴザに仲良く座って見た花火は夢の国、この世のものとは思えないほどキレイで最高だった。
まだ幼い私たちはお互いの想いを口に出すことも行動に移すことも知らなかった。一緒に顔をくっつけて写メを撮ることも恥ずかしくてできない。キスすることもできず、手をつなぐだけだったが、本当に幸せだった。
ところが、瞬君と会ったのは、それが最後の日となってしまった。二学期の始業式、瞬君が中学校に来なかった。無遅刻、無欠席が自慢の瞬君だったのに、学校から消えた。教室の瞬君の机が消えていたんだ。
両親が離婚して、転校したらしい。かなりの借金があり、夜逃げしたという噂も流れた。
あまりの衝撃、中一の私には残酷な事件であった。スマホで連絡をとることもできなくなってしまったから。
瞬君は私の初恋の相手、恋の天使だったんだな。心にポッカリと大きな穴が開いたようで、その日からいちごが嫌いになってしまった。
いちごは、食べるけどね。花火大会は大っ嫌いになり、女友達に誘われても行かなくなった。
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