殺到するお客さん

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殺到するお客さん

「さあ、さあ、この話はこれで終わり。さあ、今日は忙しくなるよ。」  ママの予言通り、朝の八時からのモーニング定食からお客が殺到した。この日ばかりは、常連のお客さんも遠慮する。帰省客や観光客に店内が埋め尽くされるのを知っているからだ。  毎年、八月十七日は台風や高波で開催が危ぶまれ、延期されることもある。開催されても途中で雨が降ることも珍しくない。  それなのに、今年は、雲一つない好天気。最高気温が三十五度を超える猛暑日となり、夜間の最低気温が二十五度を超える熱帯夜となると朝のテレビで天気予報士が言ってた。 カランコロン カランコロン カランコロン カラカラ・・・・  帰省客と観光客が、朝から、旧交を温めに、涼を求めて、うちの店に入れ替わり立ち代わりやってくる。ランチは十一時からなんだけど、このペースで行くと確実に行列ができる。   それはそれで嬉しいけど、とてもママと私だけでは手が回らなくなる。 「ねえ、ママ。誰かバイト頼めないの。」  私は、ダメ元でママに聞いてみた。今まで、この日に、バイトで入った男はろくなもんじゃなかった。ママ、もしくは私に手を出そうとする不届き者だから、まず仕事ができない。根性もないので、すぐにママに戦力外通知を叩きつけられる。  そうかといって、女の子でも華やかなイメージに反して仕事がきついので、「もう、私、無理です。」って、午前中に辞めていく。 「わかった。心当たりがあるから、電話してみる。」  意外や意外。ママはどこかに電話して、用件を伝えている様子だ。 「はい、ありがとうございます。橋村さん、恩に着ます。」  電話した相手は橋村の親分さんらしい。  そう言って、電話を切ったママは、何故かウキウキしていた。一体、誰に頼んだんだろう。
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