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バイト、光臨する
私の疑問は、すぐに解決した。
「おはようございます。今日一日、宜しくお願いします。」
入り口で丁寧に頭を下げたのは、あの生意気な若い男、若林龍之介だった。
「えっ、何故。」
「さあ、さあ、仕事。仕事。」
若林龍之介は、私をスルーして、ママの指示通り働き始める。
この野郎、無視かい。そうかい、そっちがその気なら、私にも考えがある。ちょっとでもミスでもしたもんなら、思いっきりどやしつけるからな。パワハラ上等、覚悟しろよ。
ところが、若林龍之介は、客あしらいが上手で慣れている。特に女性客はイケメンぶりに萌え~なんだけど、注文とりから給仕、料理から皿洗いまで一人で何役もこなす。それも、手際よく完璧で文句のつけようがない。
まったく、憎ったらしい奴だ。ママが若林龍之介を満足そうに見つめる笑顔も癪に障る。こんな感情、初めてだ。私も、意地になって、いつもの三倍速く働いた。
そんなこんなで、怒涛のランチタイムは一時半過ぎに無事終了。
「ごちそうさまでした。」「また来るよ。」「おおきにな。」お客さんたちの感謝の言葉は、とても嬉しく、疲れもふっとぶ思いだ。
流石のママも疲れたらしく、休憩をしようと言ってくれた。表の看板を「只今、休憩中。三時から再開します」って、書き換えるよう、私に命じた。
「はあ~い。」
カランコロカラ~ン
私も休憩が嬉しくて、飛んでいった。そこまでは、良かった。
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