私のママの喫茶店

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私のママの喫茶店

 私は、お店の看板娘である。  私のママ、藤林百合がやっている喫茶店「グロリオサ」は、熊野市駅前にあり、熊野古道が世界遺産に登録される前から、そこそこ流行っていた。  外見は隠れ家の雰囲気がなきにしもあらずだが、店内はヨーロッパにありそうなお洒落でとても雰囲気がある造り。カウンター席とテーブル席があり、BGMはクラッシック音楽が流れる。奇をてらうことなく王道を行く喫茶店だ。  娘の私が言うのもなんだけど、ママは若くてエレガントで綺麗。まるで生きているフランス人形みたいだ。年齢は三十代後半だけど、とても、高校一年生の娘がいるようには見えない。若い頃、東京の銀座で働いていたらしいけど、それ以上、ママは教えてくれないけどね。  ママ目当てに毎日、ランチを食べに通い詰める男どもの多いこと。毎日、眉間に皺を寄せてお仕事に励んでいる市役所の職員だけでなく、普段偉そうに説教を垂れる学校の先生もいるので笑っちゃうよ。  今年は、よりによって熊野市最大イベントのその日が土曜日だ。最悪だ。例年になく、前の日の金曜日から、過疎の町が帰省客や観光客で都会並みにごった返しになる。  「グロリオサ」も朝から夕方まで、大忙し。別に、私はお店のお手伝いは嫌じゃない。勉強は苦手だけど、体を動かすのは好きだ。正直、母親の美貌を受け継いだ看板娘の私を見つめる男どもの熱い視線も嫌いでない。
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