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一方、その頃。
創地は留置所に居る風間を監視していた。
勿論、風間を逮捕した訳ではなく、いつ操られるか不明であるが為の措置だった。
「すまんな…こんな所で…
明日からは保護課でフォローできるよう上司に許可を取った。
今日だけは我慢してくれ。」
創地は、鉄格子の外にあるパイプ椅子に座りながら風間に声を掛ける。
風間はスーツの上着を脱いだ状態で、折りたたんだ布団の上に項垂れながら座っていた。
「いえ…俺が不甲斐無いせいです…
先輩にも迷惑かけてしまって…」
風間の自信が消え失せた様は、夕方と別人のようだった。
それに、仕事中は“私”だった一人称も、“俺”に変わっている事から、そうとう余裕が無いのだろう。
「やっぱり…俺はエースの器じゃなかったみたいです…
先輩のようなヒーローには…」
「違う!お前のせいじゃない!」
創地が勢いよく立ち上がった反動で、パイプ椅子がバタンと音を立て横たわった。
「俺が…お前に押し付けすぎたせいだ…
本当なら、俺がそっちに入るはずだったのに…」
創地の手の爪が食い込む程固く拳を握った。
その姿が風間には8年前、葬儀場で見た創地の姿と重なった。
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