確執。

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確執。

「……死を前にしても、まだ口を割らないのか、貴様は?フン……そんなに死にたいなら覚悟しろ…」 そう言って(さげ)すむと。 殴られる覚悟を決めて目をつぶり、歯を食い縛って。震える指でギュッとシーツを握り締めた。 こ、怖くなんか、ないっ……。 そう言い聞かせているが、前世でも殴り合いの喧嘩なんてした事ない。 ただの強がりだ。 目を閉じて、目の前の男に怖がってる素振りを見せたくない意地だけが。 今の俺を(たも)っている。 沈黙した部屋の静けさが不気味で、無風なのに身体がヒンヤリと冷たさを感じた。 ベッドに体重が掛かり、ギシッと嫌な音を立てる。 怖くなんか、ない……怖くなんか……。 そう思っていても。 恫喝したギルバートの瞳は深く暗い色をして……まるで血が通ってないような顔がより一層、恐怖に感じた。 恐怖から無意識に唇を噛んで震える体を静めようとすると、無理矢理、唇に異物を突っ込まれてビクンと身体が跳ねた。 「うぐっ!!」 「………噛んでみろ、殺すからな」 凄みながら低く響くギルバートの声が耳元から聞こえて。 その瞬間。 エミリアの夜着に手を差し入れられて。 突然の事に頭が追いつかない。 「んんッッ!!」 差し入れられた瞬間にギルバートの指が咥内をまさぐり、口籠(くちこも)った声が出る。 男の時とは違う、肌の柔らかさに驚いたと同時にギルバートの骨張った指が胸の先端に触れて……。 全身が総毛立(そうけだ)ち、ビクビクと身体が跳ね上がった。 「……や、いや……んんッ!や!!」 突き抜ける快楽に驚いて目を見開くと、ギルバートの伏せた瞳と目が合ってしまった。 「……お前はエミリアじゃない…誰なんだ?」 「!!」 ……何もかも見透かされてるんじゃないか、と思う程にギルバートの指摘は的確で。 言葉に詰まって動揺している俺はギルバートを見つめたまま、動けない。 問い詰めるギルバートの瞳の奥が(たぎ)るように揺れていて……。 まるで蛇に睨まれたカエルのような気持ちになる。 「……まぁ、いい。お前が黙るのなら身体に聞くだけだ…。本物のエミリアなら婚約者のオレを拒むような、そんなバカじゃないはずだからな…」 そう言うと、胸に触れていた手が夜着のワンピースの裾から入り込み、太ももに触れると。 今度は涙が止まって恐怖でガタガタと身体中が震えてくる。 こんな……屈辱的な思いをするなんて前世では考えられなくて。 頭の中で諒太の顔が浮かんでくる。 戻れるのなら…戻りたい…。 前世に。 家族や友達、学校……平凡な毎日でも、退屈でもいい。 あの頃に戻りたい……。 もう何も望まないから。 助けて。 誰か、俺を…助けて──────。 「ノア……助けて!!」
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