221人が本棚に入れています
本棚に追加
確執。
「……死を前にしても、まだ口を割らないのか、貴様は?フン……そんなに死にたいなら覚悟しろ…」
そう言って蔑すむと。
殴られる覚悟を決めて目をつぶり、歯を食い縛って。震える指でギュッとシーツを握り締めた。
こ、怖くなんか、ないっ……。
そう言い聞かせているが、前世でも殴り合いの喧嘩なんてした事ない。
ただの強がりだ。
目を閉じて、目の前の男に怖がってる素振りを見せたくない意地だけが。
今の俺を保っている。
沈黙した部屋の静けさが不気味で、無風なのに身体がヒンヤリと冷たさを感じた。
ベッドに体重が掛かり、ギシッと嫌な音を立てる。
怖くなんか、ない……怖くなんか……。
そう思っていても。
恫喝したギルバートの瞳は深く暗い色をして……まるで血が通ってないような顔がより一層、恐怖に感じた。
恐怖から無意識に唇を噛んで震える体を静めようとすると、無理矢理、唇に異物を突っ込まれてビクンと身体が跳ねた。
「うぐっ!!」
「………噛んでみろ、殺すからな」
凄みながら低く響くギルバートの声が耳元から聞こえて。
その瞬間。
エミリアの夜着に手を差し入れられて。
突然の事に頭が追いつかない。
「んんッッ!!」
差し入れられた瞬間にギルバートの指が咥内をまさぐり、口籠った声が出る。
男の時とは違う、肌の柔らかさに驚いたと同時にギルバートの骨張った指が胸の先端に触れて……。
全身が総毛立ち、ビクビクと身体が跳ね上がった。
「……や、いや……んんッ!や!!」
突き抜ける快楽に驚いて目を見開くと、ギルバートの伏せた瞳と目が合ってしまった。
「……お前はエミリアじゃない…誰なんだ?」
「!!」
……何もかも見透かされてるんじゃないか、と思う程にギルバートの指摘は的確で。
言葉に詰まって動揺している俺はギルバートを見つめたまま、動けない。
問い詰めるギルバートの瞳の奥が滾るように揺れていて……。
まるで蛇に睨まれたカエルのような気持ちになる。
「……まぁ、いい。お前が黙るのなら身体に聞くだけだ…。本物のエミリアなら婚約者のオレを拒むような、そんなバカじゃないはずだからな…」
そう言うと、胸に触れていた手が夜着のワンピースの裾から入り込み、太ももに触れると。
今度は涙が止まって恐怖でガタガタと身体中が震えてくる。
こんな……屈辱的な思いをするなんて前世では考えられなくて。
頭の中で諒太の顔が浮かんでくる。
戻れるのなら…戻りたい…。
前世に。
家族や友達、学校……平凡な毎日でも、退屈でもいい。
あの頃に戻りたい……。
もう何も望まないから。
助けて。
誰か、俺を…助けて──────。
「ノア……助けて!!」
最初のコメントを投稿しよう!