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いびつな関係。
え……。
………だ、誰…?
ノアって……。
開いた口から知らない名前が飛び出すと、眼の前のギルバートも硬直して目を見開く。
すると黙って俺達の様子を見ていたであろう、銀髪弟がスッと俺達の前に現れた。
「……すみません、ギルバート殿下。そろそろ、お戯れもよろしいかと…。続きはオレが取り調べるので…」
無表情でギルバートに接するエミリアの弟は淡々と言葉を紡いで対応する。
しかし、ギルバートは苦虫を噛みつぶすような顔をして。
チッと舌打ちをした。
「……分かった…お前に任せる。くれぐれもオレを失望させんなよ…?」
「……分かってます、私はあなたの護衛ですから…」
重苦しかった部屋の空気がまた一変して、恐怖で怯えた俺は緊張感から解放され、ハァ…と安堵のため息を漏らした。
ギルバートがベッドから降りると乱れた服を整えてチラッとこっちを見るが、ぐったりした俺はその場から動けず…ベッドに横たわっていた。
………何がどうなってんだ…本当に…。
混乱する頭と火照った身体を頼りないエミリアの細腕で抱き締めて震える身体を包み込む。
弟はギルバートに一瞥し、再び俺の前に歩み寄ってくると困ったような顔で俺を見つめた。
「………なんでオレの名前を…」
ボソッと呟いた小さな声に何故か…胸が締めつけられた。
じっと見つめる銀髪に目が離せなくて。
胸がこそばゆくて、むず痒くて苦しくて……。
思わず顔を反らした。
ん?
んん??
なんだろう、胸が……変だ…。
顔まで火照るような熱さに戸惑って。
鼓動が早くなるのを感じた。
スッと差し出した手に戸惑いながらも恐る恐る右手を乗せると無表情な銀髪の手の平は温かくて……何故か緊張していた身体も少し、ほぐれた気がした。
「あ、ありがとう…」
小さな声でお礼を伝えると、ビクッと銀髪の手が揺れた。
チラッと銀髪の顔を見ると、ほんのり顔が赤くなって、さっきまでの冷めた態度が軟化したのか。ちょっとだけ嬉しくなる。
……あれ。
もしかして……俺の勘違いだった…?
てっきり俺は初めて会った時の態度でエミリアを憎んでいると思っていたけど……。
それは俺の勝手な思い込みだったのかも知れない。
目の前の銀髪は戸惑いながらも気遣ってるのか、必要以上に触れる様子はない。
きっと怯えた俺に気遣ったんだろうな…。
そう思って微笑むと、銀髪は驚いた表情をしていた。
エミリア……。
お前の弟、ツンデレかよ…。
分かりにくいんだよ、お前ら姉弟の態度は…。
戸惑いながらも気遣う様子を見せる銀髪の態度に油断していた俺はギルバートが近くにいた事を忘れてしまっていて。
銀髪の手の平に乗せていた手が強引に引き離されると、目の前にギルバートの顔が見えて……視界がギルバートでいっぱいになる。
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