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誓いと孤独と…。
俺は………夢を見た。
夢の中の俺は楽しかった高校を卒業すると、専門学校へ入り、製菓を学んで…。卒業してからは実家で一から和菓子の基礎を学んでいた。
そして────月日が経ち、大人になって…家庭を持った俺は家族や友人や愛する人に囲まれ、子供にも恵まれて……幸せそうに笑っていた。
なのに……突然辺りは真っ暗闇になり、その真っ暗闇の中を。
俺は息を切らしながら必死に駆けていた。
だけど…。
走っても走っても…先が見えない。
何もない闇の中には俺一人だけが……そこにいる。
誰かいないか、大声で叫んでも何も聞こえやしない。
どれくらい、経ったのだろうか……。
数分?数時間?
それとも数日……?
その内、力尽きて横たわると……今度は孤独と喪失感に囚われて……気が狂い出す。
誰か…誰か…誰か……ッ…助けて……!!
一人はイヤだ!!
怖い、怖い…っ…。
一人にしないで………誰か…!!
両手を覆いながら無我夢中で泣き叫ぶと…。
どれ程の時間が経ったのだろうか……。
真っ暗闇のどこかで、か細くて小さな声が……聞こえてくる。
耳を澄ますと……その声は優しく俺に語りかけていて…荒んだ俺の心に深く染み渡り、不思議と癒されていく。
熱い涙は止まる事なく溢れて……嗚咽が込み上げて苦しくなる……。
それでもその声が恋しくて。
無理矢理嗚咽を飲み込んで、右手で涙を拭った。
大丈夫。
離れても心は一緒にいる。
必ず帰ってくるから。
だから大人になるまで…。
少し待ってて。
俺はその声の主の元へ辿り着きたくて……手を必死に伸ばすが、その声の主は段々光に包まれて……見えなくなっていく。
イヤだ、俺を……置いていかないで……。
離れるのはイヤだ!!
一緒に連れてって…。
俺を一人にしないで……!!
消えかけるその声の主の名を俺は叫ぶと。
同時にビクンと体が突然強張って。
その衝撃で目が覚めると、伸ばした手は宙をヒラヒラと舞った。
なんだ……夢かよ…。
なんてイヤな夢を見たんだろう…。
胸が苦しくて切なくて、そして悲しい──
瞳をゆっくり閉じて。
興奮して上がった息を整えて…さっきの夢の出来事を思い出そうとした瞬間に。
「……目が覚めたようだな……」
寝ている俺の真横に低い男の声が聞こえて、慌てて瞳を開いた。
「……ゲッ!!超最悪…。なんでお前がいるんだよ!!」
顔を見た瞬間に。
目の前のギルバートを見て、顔をげっそりさせた。
「お前が勝手に倒れたからだろう…?王族に楯突いたクソ生意気な女をベッドに寝かしつけて看病をしてやったんだ。感謝しろ」
真横でくつろぐギルバートの、上から目線な態度にムッとしてまた喧嘩腰になる。
「ハァ?頼んでねぇし!!それに隣にいたアイツはどーしたんだよ?銀髪の奴!!つーかお前、俺に近寄んな!!」
それでもバカにしたように近寄ってくる無神経なギルバートに。
俺は嫌悪感を露にする。
今、コイツの相手なんかする余裕が全然ないのに…。
何、考えてんだ、こいつは…?
キッと目の前のギルバートを睨みつけると、また胸を触られないように警戒する。
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