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追及。
額に青筋立ててキレている俺の腕をグッと掴むと、細身な身体のギルバートの腕を振りほどけなくてジタバタと暴れ出す。
「お前、そんなにイライラしてて…穢れでも始まったのか…?」
「は?けがれ??なんだ、それ??」
からかっているのはなんとなく分かっているが【穢れ】って意味が分からなくて戸惑っていると、ギルバートが唖然として俺をじっと見ている。
複雑な顔をして首を傾げると、俺まで首を傾げた。
な、なんだよ……、その呆れたような顔は!!
「そ、それ知らないとマズイのか?」
「………ハァ……女なら知っていて当然の事だろう…?知らない方がおかしい。……だからお前はエミリアじゃない。お前は誰なんだ…?」
鋭い視線で逃がさないギルバートの問いに。
俺はどうすればいいのか、分からず…言い返す言葉が出てこない。
ギルバートの言葉は核心をついている。
まっすぐ俺を見つめる瞳が…気持ちを揺るがせる。
このまま騙し続けるか、それとも本当の事を話してしまうか────……。
迷って何も言わない俺をジッと見つめた。
な、なんだよ…俺を見るな……!!
どうせ俺が『俺はエミリアじゃない。俺は男で神崎歩なんだ!!』って言ったところで…。
きっと……誰も信じない。
信じるわけがない……。
でも………。
ギルバートに本当の事を話したら……ギルバートは俺の事を…俺の言葉を…。
信じてくれるだろうか……?
僅かな奇跡に期待する俺は困惑した顔でギルバートを見つめる。
もし……存在を否定されたら……。
俺…どうなる?
試されてる状況に胸が詰まって…言葉の代りに小さな息を吐いて体が震える。
俺は……【神崎歩】という人間は…存在しない人間として。
この先。
生きていくしか……ないのか…?
沈む気持ちに支配されそうになる。
弱い心のままでは…俺はこの世界に喰われてダメになる…。
考えこむ俺にギルバートは言葉を続けた。
「もし、お前がエミリアじゃないとしても…たいした事じゃない。エミリアじゃないお前の事が知りたいだけだ」
ギルバートの言葉に。
何故かドクン…と心臓の音が高鳴る。
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