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進展する関係。
「ほ、他に何か知らないのか!?その【迷い人】の事!!」
「……知るわけないだろ、オレは生まれてないんだから。何よりオレの父を産んでその迷い人は亡くなってるからな。情報はないぞ」
すがりたい想いを打ち消すようにギルバートは淡々と現状を俺に伝える。
……元の世界に帰ることが出来ない。
俺にとってあの世界は……家族、友人、日常、将来……その全てがあった。
でもここには…俺の全てが何もない……。
現状を知れば知る程、絶望的になる。
ポロッと流れた涙が堰を切ったかのように嗚咽と共にポロポロと流れてくる。
目の前のギルバートは泣く俺の姿に驚いたのか、固まってしまってる。
……だって仕方ないじゃないか、男でも泣きたい時はあるんだよ…。
俺は長男だったから我慢には慣れっこなハズだった。だけど…!!
こんな理不尽で無茶苦茶な状況を受けいられる程、俺は大人じゃないんだよ!!
「うっ……っ…うう…っ……」
ポタポタを頬から滑り落ちた涙がシーツに落ちて…じわっと染み込んで広がっていく。
シーンと静まりかえった部屋には俺の嗚咽が
だけが響いていた。
そんな俺に困ったのか、ギルバートが声をかけてきた。
「あまり泣くな……泣きすぎるとお前、ただでさえブスなのに。余計に顔がブスになるぞ?」
声をかけたギルバートの、この場に相応しくない言動に俺の涙がピタッと止まる。
「ハ、ハァアアア!?て、てめぇは泣いている相手に優しく出来ないのかよ!?」
「?お前、オレに優しくされたいのか…?ブスの分際で」
「ブッ、ブスブス言うな!!エミリアはすっげぇー美人なんだぞ!お前の目、おかしいんじゃないのか!?」
「オレの好みじゃない」
「な、なっ……」
こ、コイツ……。
なんかムカつく!!
イライラが募ってくる俺を見て、ニヤニヤとギルバートが笑う。
「まぁ、強いていうなら…身体だけは好みかな、感度がいいようだし…」
スッと手を出してくるギルバートに。
俺は胸元を隠して睨み付ける。
「お前、オレが怖いか…?」
「こ、怖くなんかないし!!身体だけ好みだなんて。お前、最低だな!!このクソ皇子っ…!!…ひゃ!!」
顔のスレスレにギルバートの両手が伸びるとバンッと背後の壁を叩く音が耳元で響いて。
ヒュッと息を飲んだ。
……この状況って…まさか…壁ドン!?
やめてくれ…!!
男にされるなんて屈辱しかないだろ…。
皇子って……護られてるだけの、か弱い存在じゃないの!?
コイツ、どっちかって言うと美的感覚ゼロの手癖悪い、ダメ皇子じゃんか!!
「エミリアには興味ないが……アユム、お前には興味あるぞ…?」
「は??」
予想外な展開にすぐに理解が出来なくて。
瞳孔が開いたまま、ジッとギルバートを見つめる。
その間、ギルバートの指先が首筋から胸元へとツゥーと滑り落ちてきて……どこからか、体がゾクゾクしてくる。
「あッ!!こ、このバカッ!!触るな、この変態っ!!」
「…アユムは触られると感じるのか?エミリアの体なのに…?お前こそ、変態だな?」
「!!」
ニヤニヤ笑うギルバートに恥ずかしさでキレた俺は涙目で睨んで頭突きをかましてやった。
「「 いってぇ!! 」」
互いに頭を擦って頭突きの痛みに悶絶してるとコンコンと部屋をノックする音が聞こえてくる。
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