魔王の城前道具屋 最強バイト ―あいつと俺の友情物語―

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 次の日、バイトが終わってアパートに帰ると、いや帰れなかったんだよ。なぜならアパートが無くなっていたんだからな。  アパートが燃やされた? 壊された? 何ていったって魔王を倒してしまったんだからな。お礼参りにあっても不思議ではない。しかし実際は違った。ボロアパートがマンションになっていたのだ。 「なにこれ」  俺が呆然とアパートのあった場所にあるマンションを見上げる。俺のアパートどこ行った?    「よう」 「あっ、お前は魔王か」 「タカシって呼べよ」 「誰が」 「私がタカシだ」 「どうして?」 「それは私の名前がタカシだからだ」   何こいつ。俺を笑わせようとしてジョークでも言っているのか? 魔王の名前がタカシだったら笑ってしまうわ。いや、実際は笑わないけれどもな。だってそうだろ。人の名前を聞いて笑ったら、相手に失礼だからな。 「それで、タカシ。これは何だ」 「お前はマンションが分からないのか」 「いや、分かるけれども」 「なら、いいだろ」 「いや、そうじゃなくて、ここにあった俺のアパートはどこに行ったのかって話を俺はしているんだよ」 「だから、それがこのマンションだ」 「???」  首をかしげる俺。 「どういうこと?」 「分かりやすくいうとだ、レベルアップしたんだよ」 「誰が?」 「アパートがだ」 「アパートがレベルアップしたからマンションになった。そう言っているのか?」 「ああ、そういうことだ。じゃあ、私は帰るぞ」 「???。ああ、さようなら」  アパート、いや、マンションの俺の部屋に帰るとそこには大型テレビやエアコンやウォシュレットやら、何かいろいろ部屋の中までレベルアップしていた。すっかり見違えてしまったな。前はもっとこう……ひどかったんだよ。ボロアパートだったからな。  あっ、タンスの奥に隠してあったエロ本の女性の胸の大きさがAからDになっている。こんな所までレベルアップするのか。なにこれ? アパートってレベルアップするとこんなことになるのか。怪奇現象? いやこれが普通のことなのか、この世界では。
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