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「知代の、孫娘か。」 青年は、口元に扇子を当てて、あたしを見下ろす。 その姿は、美しい、としか表現できなかった。 胸までの黒髪を緩やかに肩に流して結んで、結び紐は、綺麗な薄桃色。 着物は、たおやかな着流しで、薄い色の羽織をふわりと肩からかけている。 そして、その瞳の色は綺麗な、紫。 この人は、人間? 開いた窓から風と一緒に桜の花びらが舞い込んできて、このお兄さんは、それをチラリと目の端でとらえた。 「知代って、おばあちゃんの名前…」 それに、なんで、この意味の分からないお兄さんがおばあちゃんの名前を知ってるの? お兄さんは、あたしの顎を扇子でクイッと持ち上げると、まっすぐ、あたしを見つめた。 「御初にお目にかかる。 俺の名は、吉野(よしの)。 今しがた、そなたが壊した鼈甲の櫛の、付喪神じゃ。」 つくも、がみ? 目の前にいる青年は、妖艶にクスリと笑った。
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