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「みてっ!
おばあちゃんっ!」
ヒラヒラと、舞い落ちる桜の花びら。
春の暖かい風にのって、ふわり、ふわり。
6才のあたしは、楽しそうに桜をゆびさす。
それを嬉しそうに見ているのは、あたしのおばあちゃん。
「今年もさくらが綺麗に咲いたわねぇ。
うちの庭のさくらはやっぱり格別ですよ。
他のさくらに比べても長い間、咲き誇っていますからね。」
おばあちゃんは縁側に腰かけてゆったりと笑った。
春の麗らかな日の光に照らされて、上品に輝く白髪。
あたしは、桜の木のまわりをくるくる走り回って、おばあちゃんの方をパッと振り返った。
「あたしっ、この桜だーーいすき!
きれいだしっ、それにね、なんかあったかいの!
ずっと咲いてたらいいのにねっ!」
素直な言葉は桜と一緒にふわりと舞って、おばあちゃんは目尻を下げてあたしの方を見た。
「ゆいちゃんは、この桜がすき?」
「うんっ!!」
大きく頷いて、あたしはぴょんっとおばあちゃんの隣に座る。
おばあちゃんからは、不思議な香のかおりがした。
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