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祖母、とは。 さっきの夢に出てきた、おばあちゃんのこと。 死に方は、間抜けなものだった。 おばあちゃんは幼い頃からずっと、毎朝、桜の木に挨拶をして、手を合わせるのが日課だった。 だけど、だんだん足が悪くなっていって、家族はあんまり無駄に動くと、いつか転倒して大怪我するかもしれないから、やめてくれって言ってた。 なのに、おばあちゃんはやめなかった。 案の定、2か月前に祖母は縁側から足を踏み外して転落、太ももの骨を折った。 すぐに病院に運ばれて手術をしたけど、おばあちゃんは自分で歩くことがままならなくなって、ベッドの上での生活を余儀なくされた。 老人ってさ、寝たきりになると、すぐにボケが始まるんだってね。 おばあちゃんも例に漏れず、すぐにボケが始まって、そして、昨日、入院先の病院で亡くなった。 拝んでいた桜が、ちょうど満開を迎える、そのころに。 自業自得、でしょ。 亡くなったおばあちゃんを、あたしはまだ、自分の目で見てない。 あたしの部屋があるのは古い瓦屋根の一軒家の2階。 ベッドの上で寝返りを打つと、下から親戚の声が聞こえてきた。 お通夜の準備とかあるから、親戚が集まってきてるみたい。 …やだな。来なくていいのに。 カーテンの隙間から下を覗いて、あたしは、チッと舌打ちした。 いいよ、あたし、ここに、自分の部屋にこもってるから。 ここにいれば、なにも聞こえないし、安全だし、全部、関係ないから。 閉め切った部屋で、あたしは、もう何度読んだかわからない本に手を伸ばした。 部屋の隅には電源が落ちたスマホが放置されてる。 もう、全然触ってないし、触りたいとも思わない。
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