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 そんな関係が変わったのは、出会ってから四日目のある出来事がきっかけだった。  その日、オリヌスは従者と里の者達と一緒に、森を歩いていた。医術の里の周辺の土地を知るためだ。それにカイも同行していた。  和やかな雰囲気で歩いていたが、急にどしゃぶりの雨が降ってきて、急いで里に帰ることになった。 「カイ、大丈夫か?」  非常に強い雨で視界が悪く、必死に大人たちについていこうとするカイに、オリヌスは寄り添ってくれた。  大丈夫です、と返事をしようとした時、カイの足が滑った。  あっ、と思った時にはズルッと体が落ちる感覚があり、心臓が冷たくなる。 「カイ!」  オリヌスが手を伸ばしてきて、カイの腕を掴んだ。が、その足も滑ってしまい、二人一緒に崖を転がり落ちる。  落ちる瞬間、オリヌスに引き寄せられ、抱きしめられる形で転がった。そのため、予想していたような痛みは感じなかった。 「大丈夫か?」  平らな場所で体が止まると、すぐにオリヌスが確認してきた。カイは半泣きになりながらうなずき、それを見た彼は崖の上に向けて叫ぶ。 「俺たちは大丈夫だ。幸い、低い崖だった」 「殿下! すぐに助けに行きます」 「いや、いい。この雨じゃ怪我人が出る」  オリヌスはあたりを見回す。 「洞窟がある。俺とカイはここで雨が止むのを待つ。お前達は里に戻れ」  一瞬、大人たちが話し合う気配がした。しかしすぐに、「わかりました」との声がする。 「食料と水をそちらに落とします」 「助かる。皆無事に戻れよ」  オリヌスも従者たちも、落ち着いていた。こういう場面は何度もあったのかもしれないが、冷静で、カイを気遣う優しさもあり、そして、『オリヌスなら大丈夫だろう』と大人から信頼されている彼は、とても十七歳とは思えなかった。  上から落とされた食料と水の入った袋を持って、オリヌスとカイは洞窟に入る。  洞窟は狭かった。空洞が奥に続いているわけではなく、動物もいないようで安心した。 「災難だったな。怪我してねえか?」  オリヌスは訊ねながら服を脱いで絞った。水が地面に落ちる。  カイは地面にうずくまり、頭を下に付けた。 「ごめんなさい……! 私のせいで、王子が……」 「おいおい、そんなことすんなよ。どう考えてもカイのせいじゃねえだろ。雨のせいだ、雨の」 「ですが……っ」 「俺もカイも怪我してない。何も問題ないだろ。子供のそんな体勢なんて、見たくねえよ。ほら、風邪引くぞ」  オリヌスの力強い腕で立たされて、上の服を脱がされた。オリヌスはそれを絞ってから、カイの頭に大きな手を置く。 「気にすんなよ。俺はこういう訓練もしているからな。ここよりもっと環境の悪い場所で、一人きりで十日間以上野宿する時もある。猛獣がうろつく森で、こんな食料と水が入った袋なんてない状態で、だ。そこと比べたら、ここは楽園だ」  端正な顔が、余裕のある笑みを見せた。
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