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「まあ、急に言われても困るよな」
オリヌスは眉を下げて笑った。そして、少し考えるように上を見てから、カイに視線を戻した。
「カイは俺のことが嫌いか?」
「いいえ」
「じゃあ、俺のことをどんなふうに思ってる? 里長に言われたから、しょうがなく相手をしている王子、か?」
「そんな。オリヌス様と一緒にいられるのはとても光栄なことで、幸せです」
慌てて手を振るカイに、オリヌスが穏やかな眼差しを注ぐ。その眼差しが愛情を含んでいると知ってしまったカイは、頬を染めて視線を外した。
「その……こんなことを言うと失礼ですが」
「いい。絶対に怒んねえから、本当のことを言ってくれ」
「……格好良くて優しい兄のようだと、そう思ってます」
「兄か。家族のように思ってくれてんなら、今は充分だ。でも、俺が帰郷するまでには、カイの恋人になりたい」
優しかった口調が、真剣な色を帯びた。自分は本気だと、そう伝えるかのようだった。
「だから、もし、俺にドキドキしたり、四六時中俺のことを考えるようになったり、一緒にいない時間が寂しかったり、俺に甘えたいとか、甘えられたいとか、そういうことを思うようになったら、教えてくれ」
いいな? と頬をごつごつとした手が撫でる。その手つきがあまりにも優しくて、なぜだか胸が切なくなった。
初めての感覚に戸惑いながら、こくりと顎を引く。
「王子だからとか、余計な遠慮はすんなよ? 俺の恋人になりたい、と思ったら、すぐに言ってくれ。カイが俺を特別だと思ってくれるまで、待ってるから」
「じゃ、この話はここまでにして、甘味でも食おうぜ」と、オリヌスは小皿を持つ。
彼に倣うようにして甘味を口に運ぶ。普段は滅多に口にすることがない、豪華な料理なのに、今は何の味もしなかった。
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