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本棚に追加「何を話してたんだ?」
「メリナと、ちょうどオリヌス様の話をしてたんです」
オリヌスの視線を追ってメリナに目を戻したカイは、言葉を紡ぐことができなかった。
様子がさらにおかしくなっていた。顔を伏せ、肩を小刻みに震わせている。「ごめんなさい。許して。ごめんなさい」と小声が聞こえる。明らかに怯えていた。
動揺して何も言えないカイの耳元に、オリヌスが顔を寄せる。
「怪しげな薬で体と心を病んじまったらしい。昔はここで踊り子をしていたから、詳しく知っている奴がいた」
「そんな、どうして……」
薬のせいなら、変わり果てた姿にも納得できた。
胸に痛みが走る。傷口を硬いものでほじくられるような、そんな痛みだ。
受け入れがたい現実に瞳を揺らすカイを、オリヌスが引き寄せる。
「施設で治療しているらしいから、大丈夫だ。きっと良くなる」
気遣うように背中を撫でられながら、促されるままにメリナから離れる。
振り返り、彼女を見る。オリヌスの従者が数名、近くに残っていた。
医術師なのに何もできないことが歯痒くて、歯を食いしばる。
「何もできない自分が、腹立たしいです」
村を出て橋を渡るまで、呆然としていた。やっと言葉が出るようになり、思いを吐き出す。
オリヌスに抱えられるようにして、馬に乗っていた。たくましい体から移ってくる体温に、気分が少しずつ落ち着いていく。
「あまり自分を責めんなよ。なんでもできる奴なんていねえ。カイは十分、人を助けてる」
優しい声が染み込み、心を癒してくれる。
「ありがとうございます。オリヌス様の優しさには、何度も救われてます」
振り向いて言うと、黄色い瞳がわずかに見開かれた。
長いまつげを伏せ、少しだけ笑う。
「優しさ、か。カイにとって、俺は優しい奴なんだな」
「もちろんです。初めてお会いした日から、今まで、何度助けていただいたかわかりません」
「そういえば、初めて会った時、すげえ緊張してたよな」
懐かしそうに目を細める。幸せな記憶を思い出している表情だった。
「今思うと、あの雨の日に、俺が近くにいてよかった。カイが一人きりで崖から落ちていたらと思うと、肝が冷える」
「あの時は申し訳ありませんでした……」
「気にすんなよ。俺にとっては、初めてカイと二人きりで過ごした楽しい思い出なんだ」
オリヌス様はやはり優しい。私もこうなれたらいいな。
彼と過ごすほど、憧れの気持ちが強くなる。
心に突き刺さった棘は抜けないままだが、自分にも何かはできると思い出させてくれた。
オリヌスと共に里に帰ったカイは、薬草を届けた後、書物庫へ向かった。
薬の中毒症状が載っている書物を手当り次第読んだ。
気がつけば薄暗くなっており、書物庫の明かりをつけた時、人が入ってきた。
「失礼いたします」

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