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「何を話してたんだ?」 「メリナと、ちょうどオリヌス様の話をしてたんです」  オリヌスの視線を追ってメリナに目を戻したカイは、言葉を紡ぐことができなかった。  様子がさらにおかしくなっていた。顔を伏せ、肩を小刻みに震わせている。「ごめんなさい。許して。ごめんなさい」と小声が聞こえる。明らかに怯えていた。  動揺して何も言えないカイの耳元に、オリヌスが顔を寄せる。 「怪しげな薬で体と心を病んじまったらしい。昔はここで踊り子をしていたから、詳しく知っている奴がいた」 「そんな、どうして……」  薬のせいなら、変わり果てた姿にも納得できた。  胸に痛みが走る。傷口を硬いものでほじくられるような、そんな痛みだ。  受け入れがたい現実に瞳を揺らすカイを、オリヌスが引き寄せる。 「施設で治療しているらしいから、大丈夫だ。きっと良くなる」  気遣うように背中を撫でられながら、促されるままにメリナから離れる。  振り返り、彼女を見る。オリヌスの従者が数名、近くに残っていた。  医術師なのに何もできないことが歯痒くて、歯を食いしばる。 「何もできない自分が、腹立たしいです」  村を出て橋を渡るまで、呆然としていた。やっと言葉が出るようになり、思いを吐き出す。  オリヌスに抱えられるようにして、馬に乗っていた。たくましい体から移ってくる体温に、気分が少しずつ落ち着いていく。 「あまり自分を責めんなよ。なんでもできる奴なんていねえ。カイは十分、人を助けてる」  優しい声が染み込み、心を癒してくれる。 「ありがとうございます。オリヌス様の優しさには、何度も救われてます」  振り向いて言うと、黄色い瞳がわずかに見開かれた。  長いまつげを伏せ、少しだけ笑う。 「優しさ、か。カイにとって、俺は優しい奴なんだな」 「もちろんです。初めてお会いした日から、今まで、何度助けていただいたかわかりません」 「そういえば、初めて会った時、すげえ緊張してたよな」  懐かしそうに目を細める。幸せな記憶を思い出している表情だった。 「今思うと、あの雨の日に、俺が近くにいてよかった。カイが一人きりで崖から落ちていたらと思うと、肝が冷える」 「あの時は申し訳ありませんでした……」 「気にすんなよ。俺にとっては、初めてカイと二人きりで過ごした楽しい思い出なんだ」  オリヌス様はやはり優しい。私もこうなれたらいいな。  彼と過ごすほど、憧れの気持ちが強くなる。  心に突き刺さった棘は抜けないままだが、自分にも何かはできると思い出させてくれた。  オリヌスと共に里に帰ったカイは、薬草を届けた後、書物庫へ向かった。  薬の中毒症状が載っている書物を手当り次第読んだ。  気がつけば薄暗くなっており、書物庫の明かりをつけた時、人が入ってきた。 「失礼いたします」

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