魂の在り処

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魂の在り処

 窓から入る陽の光を受けて、灰色の髪がきらめく様子を、カイは見ていた。豪華絢爛な部屋の端っこで、美しい灰色をぼんやりと眺める。  すると、髪の持ち主であるオリヌスが、ふいにこちらに目を向け、視線が重なった。 「カイ、そんなところにいないで、もっとこっちに来いよ」 「は、はい」  彼が優しく微笑み、手招きをする。  カイが近づくと、使用人が椅子を運んで来た。うやうやしく頭を垂れる使用人に礼を言って、細やかな装飾が施されたそれに、恐る恐る腰をおろす。  オリヌスの屋敷の一室には、オリヌスとカイの他に、たくさんの使用人や、王宮に仕える者たちがいた。美しい武器が壁に飾られている部屋の中央に、オリヌスが立っている。そして、使用人たちが彼の身支度を整えていた。 「儀式の準備は進んでいるか?」 「はっ。滞りなく」  オリヌスの問いに、王宮から来た男性が答える。オリヌスは満足そうにうなずいた。  今日は国の祭りの日だった。『武神の儀』という儀式をする日なのだそうだ。毎年、武人が、武器を使った舞を民の前で披露する。それに選ばれるのは大変名誉なことのようだった。  今年はそれに、オリヌスが選ばれた。民からオリヌスを推す声が多く寄せられ、他の候補者も、「オリヌス王子には敵わないから」と辞退していた。  オリヌスが少し動くたびに、服の装飾がしゃらりと揺れる音がする。彼が下半身にまとっているのは、儀式用の服だった。王国では王族か、一部の貴族しか着用を許されていない銀色が使用された、真新しい服だ。  上半身は何も着ていない。盛り上がった胸筋、割れた腹筋など、鍛え上げられた褐色の体が晒されている。  オリヌスの肌が目に入ると、昨夜の情交が頭に浮かんでしまい、顔に熱が広がる。 「失礼いたします」  カイの横に、小さな机が運ばれた。高級そうなそれの上に、繊細な模様が描かれた容器が置かれる。中にはいい香りのするお茶が入っている。 「ありがとうございます」  オリヌスの屋敷で暮らしてから、こういうことは何度もあったが、いまだに慣れないカイは、ぺこりと頭を下げる。まるで自分が王族になったかのようで、緊張してしまう。  おどおどと容器の取っ手を持ち、口をつける。飲むと爽やかな味が口内に広がり、美味しさにほっと息を吐いた。 「美味いか?」  突然話しかけられ、お茶を落としそうになる。 「は、はい、美味しいです」と答えると、オリヌスが近寄ってきた。  次の瞬間、彼は床に膝をついていた。カイの前にひざまずく形で、顔を寄せる。  室内に、大勢の人の動揺と、息を呑む気配が広がり、カイは慌てた。  圧倒的な力を持つ王子が、王と王妃以外にひざまずく。これが周りにどう見られるのか、オリヌスはまったく気にしていないようだった。 「オ、オリヌス様」 「俺にも飲ませてくれねえか?」
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