『彼方に見える山は懸想をする』

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『彼方に見える山は懸想をする』

「ねぇジョージ、『彼方に見える山は懸想をする』という言葉を聞いて、何かヘポァンと来るものはあるかしら?」 「何ですかその言葉は、何ですかその擬音は、誰ですかジョージってのは」 「質問に質問で返すのは失礼よ、ジョージ。3倍返しはホワイトデーだけで充分よ」 「人の名前を間違える方が失礼だと思うんですけれど」 「間違えたわけじゃないわ。渾名(あだな)よ、渾名」 「ジョージってのはどこから来たんですか。僕の名前には『じょう』なんて付いていませんが」 「ジョージ・マロリーよ。貴方の名前の由来じゃない。忘れるなんてどうかしているわ、名瀬山(なぜやま)東生(のぼる)君」 「誰ですそのジョージマロニーってのは」 「嘘、信じられないわ。クイズ部の間ではもはやネタ問とされているほどのベタ問よ? 何故山に登るのかを尋ねられて、そこに山があるからと答えた人じゃない。ジョージ、貴方はここを何部だと思っているの?」 「文芸部ですけど」
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