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 世間的には今週は何の変哲もない土日であり、翌週の月曜日は当たり前に勤労日である。  数少ない例外が私の土曜日午後からの二連休半だろう。強いて適当な言葉を当てはめるなら『夏休み』だ。三連休だったはずの半日を研修に費やされたのは無念の極みである。  連休二日目、日曜日の朝を迎えた。装いは私服の半そでハーフパンツへと変え、やってきたのは早朝も早朝の『新』大阪駅ではなく大阪駅。地元民でもないとピンと来ないが、この方針転換が意味するところは大きい。  私のリュックには五枚の水色のチケットが入っている。そのうちの一枚を改札の端にいる駅員に渡して印を刻んでもらうと、朝一番の快速に乗るべくホームへと駆け足で進んでいく。  ドンピシャのタイミングで電車がやってきた。在来線の主要路線とはいえ、この時間ともなると乗車している人はまばらだ。悠々と窓側の席を陣取った私は、滋賀までの旅路を前に、遥か東京の地に思いを馳せる。  陽光の眩さに乗客が次々カーテンレールを下ろす中で、私だけはあえてそのままに陽の光を浴び続けた。目に痛いけど、そうすることであの頃の感覚を思い出せる気がしたからだ。  扉が閉まり、電車が動き出した。ゆっくりと阪急梅田やHEPFIVEを横切り、加速して淀川にかかった鉄橋をかたこと音を鳴らして渡っていく。  長い旅が、はじまる。  窓辺に肘を置き、手首に顔を乗せて、眠気を噛み殺しながら流れる景色を私は眺めていた。
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