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誰もが耳を疑った。開催国経験がなかったから日本になる可能性はあったけど、その報告を聞いて喜ぶ人間なんて英語力が壊滅的な人間だけだ。院生まで進んだならばどのみち国際学会は避けて通れない。一生に一回行くか行かないかの場所に補助金付きで行けるなら、そんな奴ですら異国の名所巡りを楽しみにするだろう。
教授は素っ気なく言ったけど、それはつまり、私たちの世代にパスポートは要らないという宣告だ。まるで去年までの修学旅行が海かスキーだったのに、自分の世代だけが勉強合宿に変更された、そんな気分。
研究内容自体に手を抜くことは決してなかったけど、本番を前にして例年のような盛り上がりはあまり見られず、教授からお小言をもらう人間は次第に多くなっていった。
ともあれ、時は流れてM2と呼ばれる修士2年目の春を迎えた。
南北線の最寄り駅で下車してから十分ほど歩いた先に、勉強合宿の開催地である日本最高峰の大学があった。渡航を夢見ていた分、あえて国際学会とは呼ばないし、絶対に許さない。それはそれとして、数年前に参加した別の学会で仲良くなった友人がこの大学に在学していて、学部生時代にも大学の一室で行われた催しに参加したこともある。
後から思い返せば、この時はOBとして手伝っていた文芸部サークルの出店日と学会の開催日が入れ違いで肝を冷やす思いをしたんだっけ。出店の撤収後にホテルへとんぼ帰りして、慌ててベッドの上でプレゼンの内容を英語でぶつぶつ言いながら練習していた。
正直言って付け焼刃だったけど、そのおかげだろうか。そういう危うい状態の時に限って不意打ちを食らうことは存外多かったりする。
あいつとの出会いは、まさしく、その学会だった。
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