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 「何度も()うけど、うちは郵便局ちゃうんやで」  そう言って助教は(くだん)の手紙を渡すと、ばん、と研究室の扉を締め切った。  在学中から何度も言われ、卒業してからも同じ文言、同じ調子でその都度怒られては大きくため息をつく。このやりとりで学生時代と違うことがあるとすれば、受け取った手紙を鞄に突っ込むのではなく、ひとまずスーツの内ポケットに仕舞うようになったことぐらいだろうか。  久々ながら「また来た」と助教から連絡を受け、半日出勤の土曜日に古巣である大学の研究室を訪問した結果がこれだ。  ふつうはOBが来たならば淡々にでもそれなりの歓迎があると思っていたけど、私の研究室はその範疇(はんちゅう)にないらしい。  いや、この手紙のやりとりさえなければこうはならなかったのかもしれないけど、散々郵便の受付窓口と化した助教にとって、私の存在は顔も見たくないOBランキング一位を独走しているのだと思う。
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