Facial Recognition04

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Facial Recognition04

 元気な声で出迎えてくれたのは同じ修士2年の同級生だった。  とはいえ、学歴も研究内容も大きく水を空けられていて、私では敵わない、女傑と言われて遜色のない存在だ。学会のときは凛々しく論理的に語る印象しかないのに、普段はいたって普通の女の子。学部生の頃からの知り合いだけど、院生になってから髪型や化粧といったおめかしにも一層気を遣うようになったらしい。  可愛いって印象だった数年前と比べて、現在形はきれいが正しい表現に思える。同じ大学に在籍しているどこかの誰かさんに彼女の爪の垢を煎じて飲んでほしい。  「こっち来たんいつぶり?前の学会のとき?」  「そうやね。学会の場所もここやったし」  「そうそう。あのときのあさちゃん、大変やったもんね。文芸フリマ、そそくさと出て行って次の学会発表やったやん?ほんま大丈夫なん思うてた」  「よう言うわ。服の袖つかんでもう帰んの?とか言うとったくせに」  「そらそうやん。貴重な文芸仲間で、同じAI畑で、同じ関西仲間やもん」  にこにこしながら部屋の奥へと、彼女、西神つかさは案内する。  文芸フリマで出会ったのも、同じ関西出身なのも、同じ分野を進んでいることもすべては偶然の賜物だ。偶然もふたつ以上重なったら必然と表現されることもあるけど、私たちは数年来に渡って健全な親友である。  「つかさは年末までこっち帰ってこうへんの」  「うーん。修士論文(しゅうろん)あるしなあ。そうなるんちゃうかな。どないしたんあさちゃん、もしかしてさみしいん?クリスマス冷やかしに行ったげよか?」  「いらんわ。研究室(まけぐみ)パーティの面倒でお腹いっぱいや」  「あさちゃん学部3(B3)のときからずっとそれやん!顔悪くないんやからもっと攻めな」  「大きなお世話やわ。つかさは」
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