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…と、このまま抱っこされたまま歩いて、馬車とか乗り物に乗って帰るのかと思ってたんだけど、違った。全然違った。てか予想だにしてなかった。
まさか【転移魔術】とかいうので帰るとは…!
そう、この世界には魔法が存在するのだ。
まあ魔法世界って転生契約書にも書いてあったけどね。実際に体感しちゃうともうね、スゴイ!の一言だよ。
「僕はどうナビゲートすればいい?」と金髪エルフ。
「肩に掴まってろ。そのまま魔力を流せばいい」
「分かった。…よし、じゃあ飛ぼう。リリィ、向こうでカドベルたちが待ってるよ。もう少しだから頑張ろうね」
そんな会話をした直後、周りの景色が一変した。
さっきまで王宮という都会の真ん中どころかのド真ん中に居たのに、次の瞬間には樹木に囲まれたド田舎に居た。ギャップすごいねー。
そして向こうから走ってくる人物が。
「リリィーーっ!!!」
「あなた、リリィが?!」
はい。どう見ても両親です。
このエルフ少女ちゃん、牡丹色の髪にバイオレットの瞳という転生前の世界じゃコスプレイヤーしかしてないだろうカラフルな色彩なんだけど、向こうから小走りで駆けてくる両親ズも似たような色彩なのである。
お母さん、桃色髪ふわふわゆるふわ系ちびぺったん。
お父さん、紫だちたる雲の細くたなびきたる系貴公子。
おーし。私のセンスわけわかんねえ。
でもね、これを漫画のキャラにしてごらん。
なんかカッケエから。映えるから、画面に。
「やはり王宮なんぞにやるんじゃなかった…」
「リリィ…こんなにやつれて……ううぅ」
ああ、お母さんぽい人泣かないで。
私、見た目は病気でやつれてますけど中身は元気です。
なんせ百万回目の魂だから。強靭だから。
…しかしあれだな。転生したというのに赤ちゃんから始めるわけではないんだよね。いきなりエルフ少女になっちゃって…この子の人生を丸ごと引き受けた形になるんだよね。
エルフ少女の見た目は十歳にとどいてないと思う。
幼児は脱却してるだろうが、ランドセル背負って小学校通ってそうな子供だ。
エルフだから長寿だろうし、不老だとあのオッサンは言っていたな。
これからの人生、いやエルフ生を、あの子に代わって私が歩んで行くんだ…。
この世界は優しい。
転生してから会う人会う人が皆、エルフ少女を気にかけてくれている。
白髪お兄さん(すっかりこれで定着したけど後で名前教えてもらえるかなあ)に姫抱っこされたまま、エルフ村の私の家っぽいところへ連れていってもらった。
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