百万回目の魂が行き着いた場所

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そうか。ファンタジーならなんでも有りか。 例えば剣と魔法の世界。 『ほう。そういう世界が望みか。どんな魔法を使いたいのかね?』 そうだな~。 描いたものが現実になる魔法なんていいよね! 『そんなのでいいのか。欲が無いな』 そんなこともないよ。 生きてる時にはでっかい夢があった。 連載たくさん抱える偉大な漫画家になるという夢がね! もし死んだのならもうその夢は追えないわけだけど…。 『なら、種族は何がいいかね?』 種族?ああ、ファンタジーの世界の話ね。 それなら断然エルフ。神秘的な美貌と年取っても若々しいのがいいよね! そして長寿。ハイエルフなんてのは不老不死ってのがデフォでしょ。 『不死は駄目だ諦めろ。不老は約束できる。あと美貌な…エルフは確かに美形だが、中身がお前だと…どうだろうなあ』 ぬあんだとおぉーーううう 見た目良いのに中身残念美形だとでもいうのかあああ つーか、不老いいのかよ。ずっと死ぬまで美形だよ。いいの? でも不死は駄目ってよくわかんないんだけど…。 『不死は絶対に授けれない。お前には寿命を糧に特殊な能力を使ってもらうからな』 え。寿命を糧に…だと?なにその諸刃の剣な能力。いらん。いらんよ。 あ、それならさー寿命を無くせば能力使い放題ってことになるけど、そういうの出来る? 『そのような存在は我が管理下に置けない』 はい?じゃあ、あなたは世界の管理者とかそういうの? てゆーか、私はいったい誰と話をしているんだ? 私の独り言に答えてくれるものだから、ついつい応酬してしまったのだが、周りを見渡しても誰ひとり居ない。 あるのは先ほどまで見回していた四阿だけだ。 あ、今目の前にあるこの英国風なのは私の好みだわ。 八角形の板張りに深緑色の屋根、柱には植物の蔦が絡みつき、小窓には小鳥のオブジェが留まってる。まるでイングリッシュ・ガーデンにあるような素敵な四阿…この場合、欧風に表現するとガゼボというのかな。いいじゃないの。かーわいーい。こういうの自分ちの庭に欲しかったんだよね。薔薇も植えてさー。 でもアパートの狭いベランダじゃ置けなかった。 置けるのは精々、観葉植物だ。緑が欲しい癒しが欲しい愛が欲しい。 そんなこと呟きながら原稿描いてたっけ。生前の私。 『中に入れ百万回目の魂(ミリウン・ソウル)よ。数多の転生ご苦労だった。茶ぐらい出そう』 またあの声が聞こえる。百万?何が何だって? てか、お茶か。抹茶黒豆玄米茶が飲みたいな。 私は、ふらりとその素敵なガゼボの中に足を踏み入れた。
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