恋したアナタと時の狭間で

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私は急いで、三代目タブレットちゃんこと神器を背中の鞄の中に収納する。 この背負い鞄はタブレットを収納するだけに特化した便利な鞄で、私のお手製である。外側はキャラメル色の革製で、内側はクッション性に優れた綿を使い小花柄の布で保護してある。上からはランドセルのように取り出せるが、なんと両側面にはジッパーがついていて、背負ったまま横からも出し入れ出来るようになっているのだ。 ジッパーがこの世界にあるのかと言われれば、無い。無いものをどうやってつくったのか。確かにこれは私のお手製であるが、私にジッパーの構造が理解できてるわけではない。いつか誰かにジッパーを作ってもらいたいものだけれど、それはそれ。 実はこれ、神器の真骨頂、描いたものが本物になっちゃう機能を使ったのだ。付属のペンを使って、アプリ【ペントゥラート】で絵を描けば、それが本物になっちゃうわけ。便利でしょ。寿命吸い取られるけど。ジッパーというこの世界にはまだ存在してないものを盛り込んだのがいけなかったのか、寿命を約一日ほど取られてしまった。さよなら私の貴重な寿命。一日も生き延びることができれば好きなもの食べまくれるのにね…。 さあ、フィンブェナフさんともお別れである。【転移魔術】でイーガンさんと共に消えていくのを、私は小さく手を振って見送った。 「話ができなくて残念だったねえ」 金髪エルフのシャドランが私に声をかける。 今、時が戻って動き出した彼は知らないのだ。 私とフィンブェナフさんが二人だけでたくさんお話できたことを…。 「大丈夫よ。顔見れただけで嬉しいもん」 明るく返す私は健気な子だと思われてることだろう。でも実際は違う。 神器を使って会う時間をつくった狡猾なやつさ。おかげで寿命が三十分ほど減りました。これで、この胸を締める罪悪感もチャラにしてほしい…。
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